栃木で牧場経営をしながら、地元・宮崎でも地域の人々と商品開発を進めるなど、自然と地域の人に寄り添う生活を送る紗栄子さん。34歳、母として、経営者として。より自分らしく生きられるようになってきたという今の思いを聞きました。
経営者として。地方に生きる
「栃木の牧場の持ち主が変わるかもしれないと聞いて、働く人々、馬たちはどうなるんだろうと、居ても立ってもいられず、何か自分にできることはないかと昨年から牧場の運営を引き受けることになりました。命を預かっていますから、失敗してはいけない。プロでないなりに必死でやる覚悟を持ち、そこで暮らすみんなと同じ生活をし、問題点を見つけるところから始めました。地元の宮崎でも、子供たちと農家さんのお手伝いをさせてもらったりしています。牧場では野菜染めの生地の商品を販売してみたり。以前から一次産業に関心があり、牧場の運営を始めたことで、一次産業の方々との商品開発も進め、好奇心旺盛にいろいろ試しているんです」
海外から戻って見えたもの
「2017年から子供たちが英国の学校に行き始め、私も一緒に暮らしました。子供たちは世界中の国から来た同級生のおかげで、世界で起きている問題を自分のこととして感じられるよう成長しました。私自身は外国で生きていく、ということに必死でしたけどね(笑)。何者でもない自分として、家族と過ごせたのは貴重な時間でした。注目されることから遠ざかるように、東京からロンドンへ行きましたが、日本に帰ってきた今、栃木や宮崎、東京とそれぞれの場所での暮らしはとても心地よい。そのときに自分を必要としてくれる人、場所に、しっかり貢献していくことが、私が私らしくいられる生き方なんだと実感しています」
支援活動。世の中への恩返し
「一人で子供を育てていくことになったときはすごく大変で、いろんな人に助けていただきました。それにモデルの仕事は、応援してくれる人たちがいないとできなかった。日本中に私たち家族を応援してくれた人がいて、災害でその人たちが苦しんでいるなら、自分のやれることをやるべきだと、一般社団法人Think The DAYを立ち上げ、支援活動をしています。これからの私の役割は、困っている人と支援したい人をつなぐプラットフォームになることだと思っています。一昨年の千葉の台風のときは、SNSでみなさんへも協力をお願いしたら2日で4tトラック15台分もの物資が集まって。芸能の仕事でいただいた影響力を正しく使い、世の中へ恩返しをしていきたいんです」
自分らしく、あるために
「牧場のベテランスタッフに言われるんです。『急がば回れだよ』って。一つひとつ丁寧に仕事を重ねていくことが大事だと教えてもらっています。そういう方々のアドバイスをしっかりと受け止められる状態でいるために、忙しさに流されないフラットな自分でいようと、常に心掛けています。今、私にとって大事なことは、誰かの役に立っているか、ということ。そういえば、昔おばあちゃんたちが言ってましたよね、『自分だけ幸せ、は幸せじゃない』って。大人になるとそうなっていくんですね。そこを突き詰めれば、心地よい場所や、心震わせる仕事が見つけられる。自分らしく生きていけると思うのです」
自分らしい選択を積み重ねて、たどり着いたのは「誰かのためになることをする」というシンプルな結論。紗栄子さんの生き方は、私たちの未来を考えるうえで大きなヒントになるはずです。
紗栄子(さえこ)
1986年11月16日生まれ。宮崎県出身。モデルやタレント、女優として活躍。10代の頃からアパレルやコスメを中心にさまざまな商品開発に携わる。2019年に一般社団法人Think The DAYを設立。’20年には拠点を栃木県大田原市に移し、NASU FARM VILLAGEの運営にも参画。