小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優 多部未華子さんの連載「多部未華子がBOOKコンシェルジュ!」。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.38 本を読んで気持ちを楽にしたいです
《読者からのリクエスト》
外に出ると、人混みを避け、人と距離を取り、会話は控えめに…と気を張り続けていて、やはり疲れてしまいます。最近は、自宅で本を読む時間が息抜き。心を緩められる本を教えてほしいです。
《多部さんのオススメは…》
それぞれの濃い人生を身近に感じながらも、おとぎの国の物語のようにも感じる小説
世界中の人達が、明日がどうなるかわからないような毎日を過ごすようになってから、もう1年ほど経ちますね。いつまでこんな状況が続くのかと、誰もが思っていると思います。もちろん私もその一人ですが、家にいるときくらいは気を張らずに読書でもしながらほっこりしたいものですね。
村山早紀さんの『百貨の魔法』は、そんなほっこりタイムが欲しい方にはぴったりな本だと思います。
舞台は地元の人々に寄り添う古き良き老舗百貨店。そこで働く従業員やその街に住んでいる人なら誰でも知っている“店内で白い猫に遭遇すると願いが叶う”という噂があり、皆がどこかその魔法の子猫の存在を静かに信じています。自分が白い子猫に遭遇したら何をお願いするだろう?と思いを巡らせながら、従業員たちは毎日百貨店に訪れるお客様と向き合っています。
ファンタジー小説かな?と思って読み始めたのですが、そうではなく、歴史のある百貨店で働く従業員の温かい物語になっていて、少しメルヘンだったり、でも中には現実的な話もあったりする小説でした。
従業員がこの百貨店を愛しながら働いている姿も、いつからかの言い伝えである白い猫の魔法を信じている姿も、お客様それぞれとの百貨店での思い出があったり…。一つのエピソードに従業員一人ひとりの濃い人生があり、身近に感じながらも少しだけおとぎの国の物語のような感覚で読むことができました。
私は特に第三幕の“夏の木馬”の、悲しい思い出とともにその思い出が詰まった百貨店で働く、宝飾品と時計売り場のフロアマネージャーのエピソードが一番印象に残っています。少しホロリとしましたが、前向きにもなれる話で希望に満ち溢れていて、とても素敵でした。
足繁く通っている百貨店がある私は、よく行くそのお店を思い出しながら…しかし、最近はなかなか行けない状況ですので、思いを馳せながら(笑)読みました。皆さんは、よく行く場所で願いを叶えてくれる白い猫に遭遇したら、何を願いますか?
今回のオススメ本はこちら!
苦境に陥り「閉店が近い!」という噂が飛び交う星野百貨店。そこに関わる人たちはそれぞれの立場で店を守ろうと懸命に努力する。百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される「白い猫」が織りなす、魔法のような物語。
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