人生の分岐点で迷ったときや、立ち止まるたびに勇気をくれる、いつだって初心にかえることができる“魔法のような言葉”があるだけで、人生は豊かになるもの。
最新作のアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』で、主人公の鈴川恒夫役の声を演じた中川大志さん。仕事をするうえで常に壁に掛かっているような感覚で支えられていると話す、言葉について伺いました。
「もうダメだ」と思うときに、いつもこの言葉を思い出す
高校の卒業式直前に、当時学年主任だった先生が僕ら卒業生に教えてくれたのが、「自分がもうダメだと思った、そこからがスタート」という言葉。
大人になるにつれ自分の限界みたいなものはたかが知れている、といつからか思うようになった僕は、一方で役者の仕事を通してまだ自分の知らない可能性が眠っているし、余力がまだまだどこかにあると信じたいと思うようになっていました。
だから、それを先生が明確に言葉にしてくれたことに感動したんだと思います。それ以来、この言葉は常に壁に掛かっているような感覚で僕を支えてくれています。
きっとどんな仕事をしていても、どんな人生を歩んでいても、「もうダメだ」と思うことは誰にでもあると思います。そのときはつらい瞬間でもあるんだけど、でもこの言葉を思い出して、この先にはまだ出合ったことのない何かが待っている、まだ知らない自分に出会えるんだと思えれば、自分を信じて限界を乗り越えられるんじゃないかな。
怖がらずに飛び込むことで、限界の先まで行くことができる
少し話は違うんですが、僕は芝居の本番中に言葉には言い表せないような不思議なゾーンに入ったことがこれまでに何回かあるんです。例えば以前、映画でドラマーの役をやらせていただいたのですが、朝から一日中ドラムを叩いていたのですでに体も心も極限状態でした。それでも、クライマックスのシーンでは勝手に体が動いてドラムを叩き、セリフも自然と口から出ていた。こんな風に自分の意識外のところで体と心が乖離するようなことがあるんですよね。
いつ、どんなことをしたらこうなるかは自分でも説明できなくて、あるとき突然訪れるんですが、一つわかっているのは自分が守りに入っていると、このゾーンには入れない。怖がらずに飛び込むことで、限界の先まで行くことができるんです。それを知ってから、僕は不安を恐れずに全力で突き進むように心掛けています。
映画『ジョゼと虎と魚たち』がもうすぐ公開!
芥川賞作家・田辺聖子が描く、青春恋愛小説の金字塔がついにアニメ映画化。イマジネーションに満ち満ちた日常の輝き、恋愛のときめき、人生のきらめきがスクリーンからあふれ出る。
『ジョゼと虎と魚たち』
出演/中川大志、清原果耶ほか
監督/タムラコータロー
脚本/桑村さや香
原作/田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』(角川文庫)
https://joseetora.jp/
※12月25日(金)より全国ロードショー