女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で、世の女たちの生き様を観察します。
第28回 嫌いな男を思い出してしまう女
女友達(32)が今日もため息をついている。
半年前に別れた元彼からLINEが返ってこないらしい。
そういえば別れる時に散々愚痴を聞いた。
彼は仕事にプライドがないとか、お会計の度に「1800円でいいよ」と、中途半端な金額で割ってくるとか、隠れてマッチングアプリに登録してたとか。最後はぐだぐたで終わった。
復縁したいか?と聞かれたらそうではないのはずなのに、「周りに今、彼くらいしか男性がいないからかな・・・」と返信がないときはスマホ片手に気が気でない彼女。
「この気持ちがなんなのか自分でもわからない」と頭を抱えるが、恐らく錯覚しているのだと思う。
彼が好きな気持ちと、恋愛がしたい気持ちは全然違う。
今の彼女は絶対的に後者。
ストレートにいうと欲求不満なのだ。
例えるなら、彼は空腹時の家に一個だけあるカンパン。
いまカンパン食べたいか?と聞かれたらNOだが、それしかないのなら棚を開けるしかない状態。なにせ、腹が減っている。
しかし、そこにあったはずのカンパンがない。
家中を探し回り、気付くとカンパンのことばかり考えている。彼女はいまこの状態。
スーパーやコンビニ(マッチングアプリや合コン)に行くのは、確かに疲れるし面倒臭い。
でも、手近で済ませようとすると、どんどん選択肢は狭まり、自分はどんなものにときめくのかわからなくなってしまう。
カンパンも元彼も、非常事態のためにある。
非常食をメインディッシュにするのは乙女としてあまりに虚しい。
とはいえ、備えあれば憂いなし。
「ないと思っていたところに突如現れ、ついつい手を出してみたら悪くなかった」
そうたしなむ程度がちょうどいい。
最後に、
「カンパン」とかけまして
「好きでもない男に振り回されている女」と解きます。
その心はどちらも、
「どんどん缶(勘)が悪くなるから気をつけたい」でしょう。
(ちなみにわたしはカンパンをおやつに食べるくらい大好きです)
今日も女たちに幸せが訪れますように。