小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.34 平凡な毎日を大事にしたくなる小説を読みたい
《読者からのリクエスト》
最近は、仕事と家の往復だけの生活で、毎日を何となく過ごしている気がしてなりません。今まではライブやフェスを楽しみにプライベートを充実させていましたが、コロナの影響でことごとく中止に・・・。楽しみがなくなってみて、改めて日常を楽しく過ごしたいと思うようになりました。
《多部さんのオススメは・・・》
ありふれた日常のなかで、大切な人と
助け合い、変化に対応していけたら
皆さんも去年までの日常と今年に入ってからの日常が、いろいろと変わってしまったのではないでしょうか? 私もやはり、多少変わりました。大人数で家に集まって、わいわいすることもなくなり、長期の仕事が終わると必ず行っていた海外旅行にも行けなくなり、人が集まるところに抵抗なく行っていたことにも、今は距離を置いてしまったり・・・。私にとっての“いつもの日常”が少し変化した一年になりました。
群ようこさんの『びんぼう草』は、ちょっと変な言い方に聞こえるかもしれませんが、本当に“普通”のお話です。どこにでもいる女性のどこにでもありそうな話。何か大きな事件が起こるわけでもなく、ただただありふれた日常が描かれた短篇集です。でも登場するすべての女性が、何事にもブレずにちゃんと意思があり、負の状況の時でさえもさっぱりしていて、それが読んでいてすごく心地よくて。まったく同じ環境・心情ではないけれど、ちょこちょこ出てくる「あ~わかるわ~」がたくさんあって、とても面白く読みました。
失業した読書好きの女性の話「胡桃のお尻」に出てくる、朝から晩まで会社にいる時には自分の部屋からの風景や音の変化に気づけなかった——という描写。それにはめちゃくちゃ共感しました!!
今までの私も、基本的には休みの日であってもお出掛けをするのが好きで、昼間に家で過ごしたことがほとんどありませんでした。でも最近は家にいる時間が増え、日の光の入り方、どこからともなく聞こえてくるバスケットボールが跳ねる音、子供の笑い声や工事の音など、いろんな生活音が聞こえてきて、そんな音を聞きながら過ごす時間も好きになったりして・・・今までの日常も大好きだったけれど、少しだけ変わったこれからの日常にも愛着が湧きそうです。
——と、私はこんな風に楽観的に言ってはいますが、この世の中の変化に苦労することがたくさんあるかと思います。これから先のことだって本当に誰にもわからないですもん。
それぞれのありふれた、なんてことない日常のなかで、近くの大切な人と支え合えたり助け合えたりして、小さな出来事や大きな変化に柔軟に対応していけたら、とても幸せですね。
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