小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.29 動物が出てくる小説に癒されたいです
《読者からのリクエスト》
一人暮らしで、在宅ワーク中です。孤独感が募り、実家の愛犬に会いたい気持ちが高まりますが、他県なので移動もままならず。せめて小説のなかで、動物に癒されたいのですが、おすすめ本はありますか?
《多部さんのオススメは・・・》
本当に何があるか分からないご時世、
愛犬との今も大切にしたい
動物に癒しを求めるのなら、動物関連の本を読むよりも動物を飼った方がいい!と言いたいところですが、どんなに小さな生き物でも大切な一つの命。そんなに簡単に飼えない方もいますよね。
学生の頃に、実家近くのスーパーで見つけ飼い始めたトイプードルのあっぽくんはもう13歳で、目が見えなくなり、耳も遠くなってしまい、よぼよぼのおじいちゃんですが、今も元気一杯で変わらず癒しの存在です。実家に帰った時はぎゅーっと抱きしめています。
以前は私のことを認識して、実家に帰る度にわーっと駆け寄ってくれていましたが、今はもう分かっていないように思います。誰だろうと思いながら近寄ってきている感じがとても寂しいですが、それはもう飼う時から覚悟していること。寂しがっているだけではいけません。
私は基本的に、動物を題材としている映画や小説にはあまり触れないようにしています。よほどのことがない限り、観ないし、読まない。なぜなら、触れてしまうと、どうしても、自分の家で飼っているトイプードルの華ちゃん、実家のあっぽくん、そして最近仲間入りしたキャバリアのぺんくんに重ねてしまうからです。
江國香織さんの『つめたいよるに』という短編集のなかにある「デューク」というお話は、江國さんの作品の中でも有名でしょう。デュークという牧羊犬が亡くなってしまい悲しみに暮れている女の子が、ある少年と出会ってデートをするお話で、皆さんもタイトルを耳にしたことがあるかもしれません。
解釈は人それぞれでしょうが、もし自分の愛犬が亡くなってしまって、私にもこういう奇跡のようなことが起きたら、心が落ち着いたりするのかなぁと思いました。
動物を飼う時は、最期の最期までしっかり面倒を見ることが当たり前ですし、その覚悟で家に迎えるものですが、愛犬達の最期を想像するだけで、無条件にうぅと涙がじんわり滲んでしまいます。
本当に何があるか分からないご時世ですから、今を大切に、一緒にいる時間を愛情たっぷりに過ごしたい、と思わずにはいられません。
あっという間に読み終わってしまう本当に短い物語ですが、目に水分がジワッときて、心がほわっとするお話です。
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