小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.25 好きな人ができません。小説の世界で大恋愛を楽しみたい
《読者からのリクエスト》
私はもう何年も恋愛をしていないなぁと思って。このままでいいのかな、とと・・・ちょっと焦りました。どうやって、どんなふうに人を好きになったりするのだっけ? 恋愛小説でも読んで、恋愛脳のリハビリをしたいです。
どんな形であれ、愛なしでは
生きられないのだと感じさせてくれる
好きな人なんて、そう簡単にできたりしませんよね。分かります。大人になればなるほど、そんな機会はなかなかやってこないようにも思います。好きな人ができないから、恋愛小説の世界で楽しむ。という発想が私になく、ほほう・・・それはそれでとても素敵だ・・・と。
というわけで、サスペンスやミステリーにどうしても走ってしまい、恋愛小説をほぼ読んだことがない私ですが、三浦しをんさんの『きみはポラリス』を手に取ってみました。
この本は、どストレートな恋愛の短編集というより、色んな愛の形があると思わせてくれる話が収められています。愛の形ははじめから決まっているものではなく、誰かに決められてしまうものでもなく、自分が思うように作っていってもいいものなのだなと気づかせてくれました。
なので、男女の恋愛の話というよりは、家族愛の話や痛くて苦い過去を背負う男女の話だったりと、様々な形の愛の話になっていて、どれが正しくてどれが間違いとかでは全くなく、こういう形があってもいいんだなと思わせてくれる作品でした。
その中でも、私がとても気に入ったのが “春太の毎日” という一編。こういう物語のことを、「超絶可愛い」と言うのでしょうか。飼い主である麻子に惚れ込んでいる犬の春太目線の話なのですが、春太は麻子の恋人米倉にも嫉妬したりするんです。なんだかとってもキザな春太が可愛すぎて可愛すぎて、たぶん私、にやにやしながら読んでいました。
私も夫も大の犬好きですので、ちょっと!この話可愛かった!聞いて!と、読み終わった後に“春太の毎日”の話を説明し、改めてほっこりする。そして、またさらに飼い犬を愛で・・・という初体験もしました(笑)。
様々な愛の形がありますが、それぞれの人生、どんな形であれ、愛なしでは生きられないものだなと感じさせてくれましたし、強く背中を押してくれるわけではないけれど、ほんの少しの勇気を持たせてくれる作品でもありました。
私も含めてになりますが、最近、友人達がごそっと人妻になり、キュンキュンする恋話を聞く機会が少なくなりそうなので、これから、ときめきやキュンキュンを恋愛小説に求めることが多くなりそうです。
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