小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.23 伊坂幸太郎さんの作品で特に好きな本を教えてください!
《読者からのリクエスト》
映画『アイネクライネナハトムジーク』を楽しく観させていただきました。読書の秋でもあるし、伊坂さんの本を何冊か読みたいと思いましたが、多部さんのおすすめを知りたいです。
登場人物が放つ記憶に残る言葉は、
伊坂幸太郎作品の醍醐味のひとつ
伊坂幸太郎さんの作品は、よく映画化されていますよね。私は、『フィッシュストーリー』と『アイネクライネナハトムジーク』が原作の映画に出演させていただきました。
なので、新刊が本屋さんに並んでいる光景を目にすると、ついつい親近感が湧いてしまいます。でも、気がついた時には次の新刊が発売されていて、なかなか読むのが追いつかない状態。次から次へと本を書くことが出来る作家さんは本当に尊敬してしまいます。
今回、私がオススメする本は、伊坂幸太郎さんのファンならば誰でも知っているであろう『砂漠』です。
主人公・北村君を中心に、大学で出会った少し風変わりな5人の学生のお話です・・・と言いたいのですが、伊坂さんの作品は、私が映画で出演していた作品も含め群像劇のイメージが強く、この『砂漠』に関しても、「はい! こういう物語です!」とは言いにくいのです。というわけで、あらすじを語るのはなかなか難しいのですが、この物語に出てくる登場人物が放つ一言一言は、癖もインパクトもあり、とても印象に残ります。
登場人物の記憶に残る言葉が次々と出てくるのは、伊坂さんの作品の醍醐味のひとつでもあります。『砂漠』で一番印象に残ったのは、世界平和を試みる大学生・西嶋君の台詞。
・・・学生は世界のことを考えないんですよ。自分の周囲のことで精一杯でね、どうせ、会社に勤めても一緒ですよ。将来のこと、将来のこと、いつまで経っても将来を考えて、余裕なんてないわけですよ。あのね
どこかで戦争が起きてもね、まあしょうがないんじゃねえの、なんて言ってね、遠くで誰かが死んでもお構いなしですよ。見えないものは痛くない、の理屈でね・・・
抜粋した一文なのですが、この作品は西嶋君のこの台詞で物語が動き出すと言えるのではないかと思っています。でも、もっと他にも心に留まる言葉はたくさん出てきますよ!
私は、群像劇かつ、学生がメインの小説が好きなので『砂漠』はドンピシャでした。伊坂さんの作品に出てくる学生は、一見どこにでもいる学生のようでいて、どこか格好良いんですよね。
伊坂幸太郎作品にまだ出会っていない方は、ぜひ手に取ってみてほしいなと思います。
今回のオススメ本はこちら!