『GINGER』の連載「KARINA’S GARDEN」のアーカイブを順番に振り返りながら、“あのころ”と“今”、ときには“これから”を語る「香里奈のひとりごと」。写真好きの香里奈が、連載用に撮り下ろしてきた思い出のショットも紹介します。
本物をみることは、心の栄養
自分自身がモノを創る仕事に携わっていることもあるけれど、写真だけでなく、絵画やオブジェ的な作品を観ると、いろいろなことを考えさせられる。作品の背景とか、作り手の気持ちとか。
ドラマの撮影でパリに滞在したとき(2009年秋)に、1日だけオフがあったのでルーブル美術館に行ったことは、とても貴重な思い出。教科書やテレビで何度も見ていた「モナリザ」を生で観ることができて、本当に感動した。「ミロのヴィーナス」や「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」も、とにかく本物が放つオーラは特別だったから。
描かれた人の表情とか、構図とか、絵の具の色まですべてが、その絵画が私たちに伝えてくるメッセージなんだなと思う。
それは美術館だけでなくて、街のなかで凱旋門やノートルダム寺院とか歴史的な建造物を実際に自分の目で見たときにも、強く感じたこと。その佇まいとか色合いを味わうことが、心の栄養になったと思う。
ちなみにこのとき、25歳。
10代のときにこの街を訪れていたら、パリの魅力に気付けなかったかもしれない。
―と、この連載ページに書いていて、30代の今またパリに行ったら、さらに違う視点で楽しむことができるはず、と思う。だからパリは、また必ず訪れたい場所の一つ。
アートの持つメッセージを受けとめる
同じくアート鑑賞だけれど、こちらは東京・青山にある岡本太郎記念館を訪ねた回。作品のひとつひとつが、こちらに何かを訴えかけてくるようで、とても刺激的だった。
岡本太郎氏は「個性的なものの方がむしろ普遍性がある」という言葉を残していて、その言葉の深さをすごく考えてしまった記憶がある。
個性というのは作るものではなくて、その人にもともと備わっている基本的なこと。いい意味で変わっていくことって「成長している」ってことだと思うけど、自分の変わらない部分が「個性」というものなのかなと思う。
私自身、基本的な性格ってずっと変わらないから。
たとえば、仕事以外の時間はできるだけ静かに過ごしたい人間で、とにかく目立つことを避けたい性格。街でも風景のなかに溶け込みたいから、私服を選ぶときもそういう視点になっていたりね。この前も、コートを買おうとピンクと黒を試着したんだけど、ピンクは目立つな・・・と思ってやめた(笑)。
スタッフみんなでモノを創っていく過程が楽しいということが、この仕事を選んで続けている理由。有名になることが目的ではなくて、でも名前を知ってもらえないと仕事をオファーしてもらえない世界。だから仕事をやるからには、前に出なくてはと意識してやってきた。
ステージやカメラの前では、注目されるべきだと思うけれど、仕事をしていないときの本当の私は、そっとしておいて欲しいタイプ。この仕事をしているとプライベートも華やかに思われるかもしれないけれど、本当は地味なわけじゃん(笑)。
だから、表に出ている香里奈と日常の香里奈は、すごく違う感じになっているなって思う。それは当然のことだと思うけれど。
人前に出る仕事だから、たくさんの人に名前を知ってもらえることで、勘違いしようと思えばいくらでも勘違いできてしまう職業かなと思う。でもそうなりたくない。変わっちゃいけないし、変わりたくない。それが私の基本だし、守りたいこと。それはやっぱり、私の「個性」といえるのかもしれない。
岡本太郎氏の作品を観て、彼のことをより深く知って、「個性的であることの大切さと勇気を知った」と綴っていた私。自分が自分らしくあり続けるためには、強さが必要なんだなと、また改めて実感した。