自分に似合う服を選ぶとき、着こなしを考えるとき、知っておきたいファッション用語やテクニック、今どきの常識を、スタイリスト青木貴子さんが独自の視点を交えながら解説する連載「大人のおしゃれワード集」。
全国的に(世界的にも)まだ収まらないCOVID-19。ところによってはGW明けまで、再び厳しい規制がかかっています。リモートワーク、オンラインミーティングも、もはや日常。そこで今回は、オンラインの画面でどう見えるかに重点を置いて、服のディテールについて考察してみたいと思います。
「見えているところが違う」を意識!
画面には基本上半身しか映らないので、全身のスタイリングバランスを考える必要はないのですが、かえってそれがおしゃれに見せるハードルを上げてしまっていたりします。
たとえば、丸顔だけれども脚が細くてきれいなんて人は、全身で見てもらったほうがチャームポイント推しのおしゃれができるんだけれども…なんてこともあるし、ヘアスタイルが決まっていないと何を着てももっさり見えたりします。
リアルに対話しているときは、ほかの人や空間のさまざまなところに視線が行きつ戻りつ、分散するのですが、オンラインだと相手の視線は画面に集中! 意外と、実際会っているときより手を抜けないんです(家だからテキトーにしたいのに笑)。
代表的なシャツ襟、あれこれ
さて、これからの季節はシャツ1枚だったり、ニット1枚という格好になると思いますが、重要になってくるのは襟の形と肌見え具合。
まずは代表的なシャツ襟の形について、知っている方も多いと思いますが簡単におさらい。
●スタンダードカラー
言わずと知れた定番形。標準的なワイシャツの襟を思い浮かべてくださいませ。ちなみにこのなかでも角度によって呼び方が違い、最もスタンダードなものは「レギュラーカラー」と言います。そこから襟の開きが広くなると呼び名が変わり、90度になると「セミワイドカラー」、100〜120度になると「ワイドカラー」、さらに襟の開きがほぼ水平180度まで開いたものを「ホリゾンタルカラー」と呼びます。
●ラウンドカラー
先が丸くなった襟。ちょっとフェミニンな印象になります。
●イタリアンカラー
Vネックラインに襟がついたもの。襟と襟台が一枚仕立てになっていて見た目はイカみたいな感じ(笑)。こちらはエレガントな印象。
●スキッパーカラー
ボタンが無く、Vネックが深く開いたシャツ。
●スタンドカラー
通称「立襟」。折り返しがなく、首に沿って小さく立った襟があるもの。
●バンドカラー
スタンドカラーの一種であり、今年のトレンド。どう違うかというと、こちらはネックラインにバンド(帯)状の布を付けた襟のこと。スタンドカラーより襟がしっかりしているので、キリッと感が漂う!
●ボウタイ
蝶結びのできる細長い布がついたもの。
オンラインに向くシャツはどれ!?
さて、ではこのなかで、どのシャツがオンラインミーティングに向くかについて考えてみましょう。
普段だったら“爽やかおしゃれ”で通用するレギュラーカラーのシャツだと、画面で一部だけ見ると“普通で無難”な感じになってしまいがち。普通のシャツの魅力は全体のコーディネート見せられてこそ威力を発揮するもののようです。
そこで注目したいのはセミワイドやホリゾンタルカラー。こなれたおしゃれな印象がしてオススメです。第一ボタンを開けても襟の形がしっかりしている(レギュラーカラーより襟が短い)ので、だらしなく見えず、何より画面上の収まりが良い(笑)。レディースではあまり馴染みがないかもしれませんが、メンズには広く知れわたっている形。オンラインミーティングでさらりと着ていると、相当格好いと思います。探すならトラッド系のブランドか、いっそのことメンズブランドで探すという手も。第一ボタンを開けたときのVゾーンの開き具合が絶妙です。
ラウンドカラーはシャープなジャケットの下などにハズシで合わせると素敵ですが、1枚で着ると可愛くなりすぎてしまうので、あまりオススメできません。
イタリアンカラーはVの深さによって向き不向きが分かれるところ。あまり深くないものが上品でオススメ。首元もすっきり見え、爽やかできれいな印象に見えます。リアルに会っているときと違い、写っているところに視線が集中することをしっかり意識しましょう。
Vゾーンの理由でこちらは難しいな〜というのがスキッパーシャツ。夏に向けて大活躍する人気のスキッパーも、オンラインには残念ながら不向き。深V部分が中途半端な見え方になるので、どんなに可愛いスキッパーでも画面ではその可愛さが伝えられないのです(涙)。
スタンドカラー、バンドカラーはどちらもすっきり見えてオススメ。ですが注意点が1つ。襟元がコンパクトな分、もしかすると顔が大きく見えてしまったり体が大きく見えてしまうことも。それを回避するにはヘアアレンジに気を配ること。結べる長さだったら1つに束ねる、ショートの人もタイトめにまとめると、ぐっとバランスがよく見えます! ポイントは耳を出すこと。
華やかに見えるボウタイブラウスも同じくヘアスタイルが重要に。こちらもタイトめを心がけないと、思った以上に相当ボリューミィに見えてしまいますから注意してくださいね。リボンも控えめな大きさに結ぶなど、全体的にボリュームを抑えると素敵に見えます。
画面映え考は自己表現のニューノーマル
これまではトータルバランスでおしゃれを捉えていたけれど、オンライン上では違ったバランスが求められます。オンライン上での見え方を考えることも、ニューノーマルなおしゃれの一つと言えそうですね。
そして全身コーディネートは難しくて苦手だった人にとって、これはいいチャンスかも! 少ないアイテムでバランスを取ることが得意になればおしゃれにももっと興味が出てくるし、楽しくなると思います。おしゃれは無駄なことではなくって、自己表現方法の1つ。
どんどん上手になったほうがいいです!
オンラインでこそできる自己表現もきっとあります。新しい基準でのおしゃれ、皆さん楽しんでくださいね!
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