「オズの魔法使い」主演スターの壮絶な半生とは?名曲とともに描かれる歌姫の生き様

16歳で「オズの魔法使い」の主役に抜擢され、一躍スター入りを果たしたジュディ・ガーランド。映画「ジュディ 虹の彼方に」では大人たちに翻弄された子役時代、そしてハリウッドを追い出され40代になった彼女の知られざる半生を描きます。今回はこの作品について、映画ライターの渥美志保さんにレビューしていただきました。(編集部)

虹の彼方に、私のことを愛してくれる人がいる

「オズの魔法使い」は、竜巻に飛ばされ「オズの国」に迷い込んだ少女ドロシーが、家に帰る方法を知る魔法使いを探す旅に出るお話。「虹の彼方に(オーバー・ザ・レインボー)」は、きっと誰もが一度は耳にしたことがあると思いますが、これは1939年にアメリカでミュージカル映画化されたときの主題歌。歌っていたのがこの映画の主人公、16歳で映画に主演した天才少女スターにしてアイドルの、ジュディ・ガーランドです。

映画は、ハリウッドから追い出され40代になった彼女が、歌手として出演した最後のロンドン公演を描いてゆきます。映画の見せ場はオスカー主演女優賞を獲得したレネー・ゼルウィガーのステージ。声から歌い方からジュディ・ガーランドそっくり!といっても若い世代には「知らんがな!」って話でしょうが、まったく知らなくても、その歌声は心に響くのではないかしら。

そしてこれまた主演女優賞の理由でしょうが、レネーの演技で表現された「これでもか!」という「ダメ女」ぶり。それまでに3度の離婚を経験したジュディは、それでもなお自分に良くしてくれる男を、すぐに「運命の人」かのように思ってしまいます。
映画では4度目の結婚が描かれているのですが、相手は彼女のことをどこかで「メシの種」にしようとしている男(それも出会ったばかり!)なのに、その甘い言葉と優しさを簡単に信じてしまう。彼女は「愛がすべてを解決する」と思っているわけですが(さらに彼女の言う「愛」が果たして本当に「愛」なのかというのも疑わしく)、それは裏を返せば「すべてを解決できないなんて愛じゃない」ということで、結局のところすべてを壊してしまいます。

なんでそうなんだよ、ジュディ!と思う、その裏付けのようにさし挟まれるのが、子役スター時代のエピソードです。ドル箱スターだった彼女の、完全に管理された私生活――特に体重管理のために飲まされていたドラッグは、彼女がその後「薬物中毒のトラブルメーカー」としてハリウッドを追放される遠因にもなってゆきます。
さらにプロデューサー(MGMの社長)によるパワハラ(将来を握られ劣悪な職場環境、生活環境を強要されること)や、モラハラ(容姿の醜さなどをあげつらい価値のない人間に思わされること)は、今で言ういわゆるDVそのもの。最初の結婚で生んだ娘、この映画にも前半に登場するライザ・ミネリ(ハリウッドのミュージカルスター)の「ハリウッドが母を殺した」という言葉は、あながち嘘とはいえません。

そうした歴史を見ることで、彼女の歌声、その歌詞は、より心に迫ります。彼女の「自分を愛してくれる人なんていない」という思いは、同じような寂しさを抱える人達への共感となって、映画に滲みます。ちなみにLGBTQの運動に使われるレインボーフラッグは、彼女の曲「オーバー・ザ・レインボー」にちなんだものとも言われています。

 『ジュディ 虹の彼方に』
【監督】ルパート・グールド
【出演】レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロックほか
全国公開中
https://gaga.ne.jp/judy/

渥美志保
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渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
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