気持ちのいい季節がきた。【E-girls山口乃々華連載 ののペディア/街】

E-girlsメンバーの山口乃々華さんが、瑞々しい感性で綴る連載エッセイ「ののペディア」。今、心に留まっているキーワードを、50音順にひもといていきます。

第31回「ま」:街

朝、目が覚めるとじっとりと汗をかいていた。窓を開けてパジャマを脱ぐと、背中にすーっと風が通った。

いい季節だなぁ、と思う。

気持ちがいい。
やっと、気持ちのいい季節がきた。

ずっと待っていたこの風。
わたしの中が浄化されていくよう。

この風が吹き出したら、いよいよ太陽が近い季節だ。

着替えたら、素足のままサンダルを引っ掛けて家を出た。


街に出るとあっちからはカレーの匂い、こっちからは焼き鳥の匂い。
ご飯の匂いばかり嗅ぎ分けるわたしのその食い意地には笑えた。

車がどんどん行き交い、風をつくり出して、わたしの鼻までいろんな香りを届けてくれる。

“街が動いている香り”というのだろうか。

そんな香りになんだかほっと安心している自分がいることに気がついた。

明るい気持ちで過ごしていたつもりだったのだけど、意外と、不安を感じていたのだなと思う。


***


話は少し逸れるけれど、匂いといえば、人それぞれにきっと安心する香り、落ち着く香りというのがあると思う。

たとえばわたしにとっては、木の香り、水に濡れた草の香り、お線香の香り、などなど。

こうして挙げてみるとわたしは“おばあちゃん家から香ってきそうなもの”に安心し、落ち着くみたいだ。

香水やお香も、そういう要素を感じるものを選んでいる気がする。

水に濡れた草の香り・・・はいまだに見つけたことないけれど(笑)。


香りで心を落ち着かせたり、安心させたり・・・というのはわたしにはかなり効果的だと思う。

以前は、バニラなどの甘い香りが大好きでよくまとっていた。

でも生活のなかに緊張する場面が次第に増えてきたころに、バニラはどうもわたしを落ち着かせる香りではないらしい、ということに気がついてしまった。

間違いなく気分を上げるものではあったのだけれど、落ちつきや、安心感はなぜか遠のいていく、いわば“お外の香り”だった。

それから香水を変え、自然により近い香りを身にまとうようになった。

その香りは、不安なときもわたしを安心させてくれた。いい意味でも、悪い意味でも、こんなにも香りに影響を与えられていたのかと驚いた。

今は香りの効果をもっと利用すべく、あれこれと探しては試してみている。


***


街を歩いていると、本当にいろんな香りがする。
そんなことを考えながら、ごく普通に街の香りを嗅げることへの喜びを感じた。

とはいえ、まだまだ“当たり前”は戻っていないので、気を緩めることはできない状況ではある。

それでも人々は皆マスクをしながらも、なんとなく表情が明るくなったように思う。


春先の寒さはどことなく孤独感を強める。
今年は一層そうだった。

次に来る季節の暑さと、太陽の力強さ、爽やかな風は、人間を励ましてくれる気がする。

わたし、お日様の香りも大好きだ。と歩きながら思う。


【ののペディア/街】
いろんな香りが動く場所

山口乃々華/E-girls
ナビゲーター
山口乃々華/E-girls
3月8日生まれ、埼玉県出身。2011年にLDH主催の「VOCAL BATTLE AUDITION 3」を経て、2012年発売の「Follow Me」よりE-girlsとしてデビュー。2014年から女優業もスタートし、映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画「HiGH & LOW」シリーズやHulu版「崖っぷちホテル!」今年の夏には「私がモテてどうすんだ」にヒロイン役で出演する等、活動の幅を広げている。 2020年9月19日〜26日にアベマLDH祭り〜秋のLIVEスペシャル〜「LIVE×ONLINE IMAGINATION 」の開催が決定! E-girlsは9月25日(金)に出演予定。ぜひご覧下さい!
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