この愛に泣く!『彼女がその名を知らない鳥たち』が観逃せない理由とは?

Spark GINGER読者のみなさま、こんにちは! 映画ライターの古川ケイです。今週、みなさまにオススメしたい作品は、小説家・沼田まほかるによる原作を映画化した『彼女がその名を知らない鳥たち』です。 『凶悪』、『日本で一番悪い奴ら』などノンフィクションを原作に骨太な社会派作品を生んできた白石和彌監督が、初めて本格的な大人のラブストーリーに挑んだ本作。 ラブストーリーと呼ぶにはあまりに切なく、衝撃的なラストを迎えるこの作品は、観る者の心に深く突き刺さる、究極の愛の物語です。

『彼女がその名を知らない鳥たち』ストーリー

自分は働かず、15歳年上の同居人・陣治(阿部サダヲ)の稼ぎに頼って、自堕落な暮らしを続けている十和子(蒼井優)。

「借りたDVDが再生できなかった」とレンタル店にクレームを入れたり、古くなった腕時計の部品交換に応じられないと答えるデパートに文句を言ったりしながら暮らしている十和子は、誰から見ても“嫌な女”そのものだった。

日々、陣治にキツく当たる十和子だが、そんな彼女にも可愛らしい頃があった。8年前に別れた恋人・黒崎俊一(竹野内豊)と過ごしていた頃だ。

黒崎と仲睦まじく過ごす、若く幸せな自分の姿を映したDVDを見ながら、十和子は今日も陣治の帰りをアパートで待っているのだった。

そんなある日、十和子がクレームを入れたデパート売り場の主任・水島(松坂桃李)から十和子に連絡が入る。販売業者に探させた代わりの時計を持って、自宅へと訪れた水島に、かつての恋人・黒崎の面影を感じた十和子は、その日をきっかけに水島との肉体関係をスタートさせてしまう。

既婚者で、妻と別れる気もない水島の存在に気づいた陣治は、「あの男に騙されてるんやで。今のうちに手を切らなければ、“また”えらいことになる」と、意味深な言葉を十和子に告げる。

同じ頃、家に訪ねてきた刑事の酒田から、結婚して今は「國枝俊一」となった黒崎が、5年前から失踪していると告げられた十和子は、黒崎の失踪に、陣治が関わっているのではないかと疑惑の目を向け――。

登場人物全員が嫌なヤツ!? 衝撃のラストに心が震える

本作に出てくる登場人物たちは、全員がそれぞれクセのある人物ばかり。

地位もお金もない陣治をバカにしながらも、誰かに依存せずには生きられない十和子。
十和子に嫌がられながらも、執着心を丸出しにする不潔で滑稽な男・陣治。
甘く薄っぺらな言葉を吐きながら、十和子と肉体関係を結ぶ不倫相手の水島。
十和子のかつての恋人で、腹黒い野心家の黒崎。

蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊という実力派俳優たちが、それぞれの人物をこれまで見せたことがないような表情で演じます。

果たして、黒崎の失踪は陣治の仕業なのか…。不穏な空気をまとって進む物語は、あまりにも美しい究極の愛へと着地していきます。
ラストに提示される、観客の予想を超えた愛の形に、あなたもきっと涙してしまうことでしょう。

原作小説も見逃せない! 小説家・沼田まほかるをご存知ですか?

本作の原作を書いた沼田まほかるという小説家をご存知でしょうか?

1948年、大阪府の寺の家に生まれた著者は、結婚し主婦として暮らしていました。母方祖父の後継を頼まれたことにより、夫が住職となりましたが、その後に離婚。自身が僧侶となります。

さらに、40代半ばで建設コンサルタント会社を設立するも、10年ほどで倒産。50代で初めて書いた長編小説「九月が永遠に続けば」で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞し、56歳で小説家デビューしたという異色の経歴の持ち主です。
本作の原作にあたる「彼女がその名を知らない鳥たち」は、そんな筆者の第2作目となる作品です。

その後も07年に「猫鳴り」、09年に「アミダサマ」、10年に「痺れる」と作品を続けて発表した筆者の転機となったのは、先日、吉高由里子主演で映画化もされた、12年の「ユリゴコロ」です。

「ユリゴコロ」で、第14回大藪春彦賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされると知名度が急上昇し、イヤミス(イヤな後味が残るミステリー)の女王とも呼ばれるようになりました。

本作の原作を未読の方はぜひ、鑑賞後にお読みいただくと、十和子や陣治の心情をより深く知ることができてオススメです!


彼女がその名を知らない鳥たち
沼田まほかる著
文庫: 389ページ
出版社: 幻冬舎 (2009/10/1刊)
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原作を読んだ方も、未読の方も。驚きと感動に打ちのめされる珠玉の名作『彼女がその名を知らない鳥たち』は、今週10月28日(土)より全国公開です。

文/古川ケイ

『彼女がその名を知らない鳥たち』公開情報

『彼女がその名を知らない鳥たち』【R15】

10月28日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督:白石和彌「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」
原作:沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』(幻冬舎文庫)
出演: 蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊
配給:クロックワークス
上映時間:123分
公式サイト: kanotori.com
©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会 

古川ケイ/映画ライター
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古川ケイ/映画ライター
新作オススメ映画情報サイト「木曜日のシネマ(http://thursday.jp)」運営。新卒で映画配給会社に入社し、映画情報誌の編集・ライター業務に従事したのち、洋・邦作品の宣伝を手がける。2016年より、映画ライターとしてオススメの作品をご紹介しています!
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