夜空を見上げてみよう。月のパワーを浴びて、美しい心を育む

日毎に空気は澄みわたり、夜の時間が長くなるこの季節。一年の中で最も月が美しく輝く時期でもあります。 月の満ち欠けと女性の体のリズムには、密接な関係があると言われています。 月を愛でれば、美しい心が育つ。世界で活躍する禅僧・枡野俊明氏の「禅と月」のお話をご紹介します。 今晩は夜空に浮かぶ月を見上げて、自然のパワーを取り入れてみませんか?

人生とは・・・

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人生は縁によって成り立っています。縁しだいで幸せな人生に向かって歩むこともできるし、逆に不幸を背負い込むことにもなる。どういう縁を結ぶかで人生は変わっていきます。
「これは私の運命だからしかたがない」
「背負った宿命は変えようがない」
そう考える人がいるかもしれませんが、そんなことはないのです。人生はいつでも、よい縁を結ぶことで幸せな方向に変えられる。私たちの人生は、決して人間の力の及ばないものに支配されているわけではないのです。
ですから仏教では、縁を結ぶこと、すなわち「縁起」を何より大事にします。それによって人生は左右される、と考えるからです。
では、よい縁を結ぶにはどうすればいいのでしょうか。ここはきわめて大切なところです。

「三業」を整える ーその1ー

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仏教は「三業(さんごう)」を整えよ、と教えます。三業とは「身業(しんごう)」「口業(くごう)」「意業(い ごう)」の三つ。つまり、身(体)と口(言葉)、意(心)を整えて生活することで、よい縁を結ぶ条件がそろう、というわけですね。

一番目の「身を整える」とは、所作を正しくする、ということ。姿勢や一つひとつの動作を正すということばかりでなく、正しい法(教え)にしたがって、できるだけ他人のために自分の体を惜しみなく使う。それが身業を整える、ということです。

人間はともすると自分中心の行動をとりがちですが、そうではなくて、まず相手の立場に立ってものを考え、行動するようにつとめることが大切です。

「三業」を整える ーその2ー

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次の「口を整える」とは、愛情のある親切な言葉を使うことです。同じことを伝えるのでも、相手の年齢や立場、また、人柄や力量によって、伝え方は異なって当然。いえ、その人にふさわしい伝え方をすべきなのです。
「この人にはどんな言葉で伝えたらいいのだろう?」
それをつねに考えていくのが口業を整えることになります。

「三業」を整える ーその3ー

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最後の「意を整える」とは、偏見や先入観を排し、ひとつのことに囚われることなく、どんなときも柔軟な心を保つことです。禅ではこれを「柔軟心(にゆうなんしん)」と呼びますが、喩(たと)えるなら、空に浮かぶ雲のように形も流れ方もまったく自由自在な心、といっていいかもしれません。
このように、身、口、意の三業を整えることが、よい“縁”を呼び寄せ、結んでいくことに直結するのです。先のキュウリの例でいえば、畑の耕作や肥料を撒(ま)くこと、水やりや日頃の丹精が、人間にとっては三業を整えることにあたります。
いつも三業を整えるという意識を持って生活する。その積み重ねが、私たちの人生を実りの多い、さらに人々から祝福されるものに変えてくれる、といっていいでしょう。
所作は、よりよき人生を築いていくための、そして、美しく生きるための三本柱のひとつです。そのことを肝に銘じてください。

枡野俊明
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枡野俊明
曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学環境デザイン学科教授、ブリティッシュ・コロンビア大学特別教授。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。禅の庭の創作活動によって、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年に「ニューズウィーク」誌日本版にて、「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園など。著書に、『禅、シンプル生活のすすめ』『禅-シンプル発想術-』『人間関係がシンプルになる禅のすすめ』『禅の庭』ほか多数。常に、老若男女に向かって、日本の美しさについて説いている。
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