頑張ることから逃げていない?北川悦吏子さんと振り返る、平成の女性像

GINGER世代がまだ幼かった平成初期、そして30年後の今。女性のライフスタイルには、大きな変化がありました。今回は平成の幕開けとともに女性を描き続けてきた脚本家の北川悦吏子さんに、ヒロイン像の変遷をひもといていただきながら、これからの女性が進むべき道を探っていきます。

「強い女」から「癒やし系」へ。時代とともに女性のマインドは変化した

Photo by LESLIE KEE

平成元年、28歳で脚本家としてデビューし、「ロングバケーション」や「ビューティフルライフ」をはじめ、今なお語り継がれるドラマを、世に送り続けてきた北川悦吏子さん。平成30年に放映されたNHK連続テレビ小説、「半分、青い。」も大きな話題になるなど、まさに「平成」の時代を通して、第一線で走り続けてきた。

「平成になって、私を含めて20代の女性脚本家が多数デビューしました。当時、ドラマの視聴者は若い女性がメインだったから、同じ感性を持つ作り手が求められたのでしょうね、きっと」

男性の作り手が中心だった昭和の時代は、ヒロインといえば楚々とした耐える女性が主流。それが、「強い女性を描いてよしとなった」と、北川さんは振り返る。

「平成初期は、自分の意見をはっきり口にする、強い女の子がもてはやされていた気がします。『愛していると言ってくれ』(平成7年)の紘子なんて、晃次に、『僕のなかには、“僕は君と”という言葉は、はっきり言ってない』と拒否されても想いを貫きます。強い意志と気持ちを持った女の子でした」

その後放映され、大ヒットした「ロングバケーション」(平成8年)や「オーバー・タイム」(平成11年)にも、サバサバとした“男前”なヒロインが登場。しかも、どちらもヒロインはアラサーで独身。昭和の終わりごろには、「女の子はクリスマスケーキ」と称され、25歳までに結婚しないと売れ残りと揶揄されたのを思えば、隔世の感がある。

「でも、景気が悪化し、社会に閉塞(へいそく)感が流れてからは、女性にしても女優さんにしても、癒やし系が注目されるようになりましたよね。みんな疲れちゃったのかな。第一、女性自身が安定志向になったような。なりたい職業の上位に公務員が入ったり、専業主婦願望を抱く人が増えたり。頑張ってキラキラした世界を目指すより、地に足の着いた暮らしを求めるようになったというか・・・。女の子たちが、夢を見なくなってきたような気がします」

彼の心の扉を開けようとなりふり かまわずに頑張る紘子。明るくサ バサバした性格で、周囲を自分の ペースに巻き込む南。機嫌をすぐ 表情に出し、言いたいことを何で も手話で言ってしまう沙絵。北川 作品のヒロインはいつも強く、自分を持っている。

待っていても、チャンスは訪れない。これからは自分で考え、行動した人が幸せを掴む時代

バブルで勢いよく幕を開けた平成は、平成9年の山一證券破綻などで深刻な経済危機に陥り、以降、長らく低迷。そうした社会情勢のなか、女性のマインドが、「仕事も恋も、高みを目指して全力投球!」から、「頑張りすぎず、身の丈に合った幸せを享受」と内向きになってきたのは、ある意味当然のこと。だからこそ、「半分、青い。」に登場したヒロイン、鈴愛の、自分の気持ちに素直で、がむしゃらに行動する姿がまぶしく思えたのかもしれない。

「鈴愛は自己主張するヒロインだから、煙たがる人もいるかもしれない(笑)。でも、待っていればチャンスがやってくる時代は終わったと思います。自分で考え、行動しないと、何も手に入らない。もちろん、みんながみんな鈴愛になる必要はなくて、自分に合った生き方をすればいいと思います。ただ、頑張るのはカッコ悪い?とか思わないで、と言いたい。周りの目なんか気にする必要ない。自分の人生です。『オレンジデイズ』(平成16年)の沙絵なんて、思ったことはすぐ顔に出すし、言いたいことも手話で伝えちゃう。豪快でした」

「半分、青い。」のヒロイン 鈴愛

30年間、「そのときどきで自分の思うことを書いてきた」という北川さんだが、ヒロインの多くは、もがきながらも、自分の足で立ち、道を切り開こうとする女性たち。

「やりたいことはあるけれど、あとちょっとの勇気がなくて、一歩を踏み出せない。そんな人の背中を押したいという想いが、いつも自分のなかにあるんですよね。アラサーくらいになれば、いろいろ経験も積んでいるだろうし、知恵もあるはず。それを糧にして、前に進まないともったいない! 逆に今までの積み重ねがあるから臆病になる気持ちもわかるけれど、悩んでる時間に、手段を見つけて行動に移した方がいい、と私なんかは、思います。
私、人間には〝前に進んでいる〞という実感が必要だと思うんです。腹筋できる回数が増えたとか、お出汁がうまく取れるようになったとか、何でもいい(笑)。その人それぞれ。小さなことでも、大きなことでも、それって自己実現だと思うんですよね。きっと、人生が楽しくなりますよ」

北川悦吏子(きたがわえりこ)●1961年生まれ、岐阜県出身。早稲田大学卒業後、広告代理店勤務などを経て1989年に脚本家デビュー。ドラマ「素顔のままで」や「あすなろ白書」の大ヒットで“ラブストーリーの神様”と呼ばれ、その後も話題作を次々発表。映画『ハルフウェイ』や『新しい靴を買わなくちゃ』では脚本のほか監督も務め、『恋をしていた』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書も多数。

取材・文/村上早苗
イラスト/常田朝子

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