はぁ、しあわせだ。【E-girls山口乃々華連載 ののペディア/寝言】

E-girlsメンバーの山口乃々華さんが、瑞々しい感性で綴る連載エッセイ「ののペディア」。今、心に留まっているキーワードを、50音順にひもといていきます。

第24回「ね」:寝言

今わたしは、表紙にかわいい花の蕾が描かれた本を手に取っている。
直感で選んだ。

パラパラと開いてみては、その未知の世界にワクワクしている。

それは、日本から5〜6時間で行けてしまうベトナム南部の中心都市であり、ベトナム最大の商業都市と呼ばれるホーチミンについて詳しく書かれた旅行本。

迷わず買って、ピンクの小さなキャリーケースと共に羽田空港へ向かった。


旅行本は、わたしにとって魔法の絵本のよう。

町の地図や移動手段、言語、おいしいごはんが食べられるお店やホテル情報まで細かに記載してあるので、とても想像しやすい。

飛行機に乗りながら、買った旅行本を読みこむ。

その情報を頭の中で巡らせながら、まぶたの裏側に景色を広げる。


自然と口角が上がるような気分になったと同時に、不安な気持ちも湧き上がってきた。

このまま何かの手違いで帰ってこられなかったらどうしよう、
スリにあってパスポートもお金もなくて、誰も助けてくれなかったらどうしよう、
iPhoneを落として、誰とも連絡をとれずに行方不明扱いされたらどうしよう・・・など。

こわすぎて、浮かれてばかりではいられない。

やはり行くのをやめようか、と思う。


でも、未来について悩んで、不安になったって仕方ない。
それにもう、飛行機に乗ってしまっているんだから行くしかない。
自分の選択は、すべて正解だと思って過ごすほかないのだ。

チェックインする予定のホテルから、届いたメールを読み返す。
ホテルのスタッフさん、優しい人だといいなぁ。着いたらまず、なにをしようかなぁ。


そんなふうに浮かれ気味に過ごしているうちに、スーッと現地の風の匂いが感じられてきた。

爽やかで、柔らかくて、頭の重みをすくってくれるような香り。

カラッとしていて心地いい。

自然と身体に馴染んでいく、その異国感に気持ちが高まる。


ホーチミンは今、乾季で気温は大体33〜35度。晴天の多いベストシーズンである。

この頃の東京も春のように暖かいけれど、夏まではまだ遠い。
ホーチミンに着けば、一足先に夏気分を味わえる。

それはわたしにとっては夢のようなご褒美。


優しい味のフォーが食べたいな。

燦々と降り注ぐ陽射しで身体をいっぱいにしたいな。

カッコつけずに、自然体でいられて。

そして派手でなくていいから、その街らしい街をゆっくりと歩きたい。


飛行機はあっという間にタンソンニャット国際空港に着陸。
荷物を受けとって、予約していたマジェスティック・ホテルへとタクシーで向かう。

空港を出たところで、地元のバイクタクシーの人から話しかけられた。

タクシーに乗るから、と言ってお断りしたが、バイクタクシーかぁ、と日本にはない文化に触れて、異国に来たことを実感した。


マジェスティック・ホテルは、ホーチミンの歴史を感じられるホテルだ。

豪華でとても美しい。階段なんて黄金ピカピカなのだ。どこもかしこも広々とした品のある空間に、天井のシャンデリアが優雅に輝く。


ドンコイ通りというお買い物スポットにも近いし、サイゴン川も見える。
明日の朝食はサイゴン川を眺めながら、フルーツなんかをゆっくりと食べるつもり。
はぁ、しあわせだ。


荷物を置いたら、ドンコイ通りに出る。
アオザイという、ベトナムの民族服を着てみたくて、それらしい店をまず探す。


刺繍が施されたポーチなど、かわいい小物を売っている雑貨屋があった。
旅行本で見た通り、ベトナムらしさ満点。
繊細で、色遣いも独特でいいなぁ、お土産に買おうかな、なんて思っていたら、少し先へ進んだところにきれいなカフェが・・・


トントントン。
横から肩を叩かれた。

仕事帰りの車の中。

脳みそが全然動かず、ボケェっとしていて、体も頭も思い通りに動かない。

そう、昨日は、アリーナのステージでライブだった。大勢の人の前で、ありったけの体力を使った身体がまだ回復しきっていないらしく寝ても寝ても足りないのだ。

変な体勢で寝てしまっていたようで、首の筋と肩が痛む。



「ねぇ、さっきなんか言ってたよ」と横にいたメンバーに言われた。

空想で遊んでいたつもりだったのに、いつのまにか寝てしまっていたようだ。

「ごめん、寝言だと思う」

笑いながら言った。


穏やかな昼下がり。


車内には、この時期らしからぬ明るい太陽の光が燦々と降り注いでいる。
ふと、南国の風を感じた気がした。

なんだか少しだけ、疲れが和らいでいくようだった。


【ののペディア/寝言】
夢の中の世界の会話

山口乃々華/E-girls
ナビゲーター
山口乃々華/E-girls
3月8日生まれ、埼玉県出身。2011年にLDH主催の「VOCAL BATTLE AUDITION 3」を経て、2012年発売の「Follow Me」よりE-girlsとしてデビュー。2014年から女優業もスタートし、映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画「HiGH & LOW」シリーズやHulu版「崖っぷちホテル!」今年の夏には「私がモテてどうすんだ」にヒロイン役で出演する等、活動の幅を広げている。 2020年9月19日〜26日にアベマLDH祭り〜秋のLIVEスペシャル〜「LIVE×ONLINE IMAGINATION 」の開催が決定! E-girlsは9月25日(金)に出演予定。ぜひご覧下さい!
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