誰と誰が仲よし?ハブられてない?と疑心暗鬼。SNSの気遣いの魔の手に騙されてはいけない!

私たちの生活に欠かせないSNS。 通勤途中、仕事の合間、常にチェックして “いいね!”やコメントを欠かさない。でも、そんな気遣いにいい加減疲れていませんか?  SNSがもたらす世界を以前からシニカルに見つめてきた、コラムニストの辛酸なめ子さんがレクチャーします!

いいね!は、本心ではないかも。嘘の気遣いが蔓延する世界

「スマホやSNSが当たり前になっ て、日本の気遣いの概念が変わってきたと感じます」と言うのは、漫画家・ コラムニストの辛酸なめ子さんだ。

誰かが、写真をアップしたら、”いいね!”をクリック。でも、どれだけの人が本来の素直な意味で”いいね!” を押しているか疑問に感じる部分も・・・。
「”いいね!”にはいろんな意味があると思うんですね。”いいよね〜”も あれば、うらやましい嫉妬が絡んだ ”いいな〜”もあるし”どうでもいいね”というものもある。嫉妬や苛立ちを含んだ”いいね!”もあると思うんですね。そういった黒い思いを見せずに、一種の気遣いとして活用している”いいね!”が蔓延しているように感じています」

辛酸さん自身、インスタを始めて、 思いもよらなかった面倒な思いに困惑したという。

「遅まきながらインスタを始めてみると、知り合いの人たちがあげる写真から周囲の人間関係がまざまざと見えてきたんですね。初めは、○○さんの誕生日会の写真だ〜、と”いい ね!”を押していたのですが。しだいに、誰と誰が仲よしで、このパーティーには誰が呼ばれていなくて、という部分が可視化されるようになったんですね。あれ !?   私は呼ばれてない?  もしかしてハブられてな い? と知らぬ間にインスタに振り回される思考回路になってしまって。
まるで中学のときに、誰と誰が仲よしで、グループは誰と誰で、という ことを気にしていたときと同じ感覚です。いい年をして、こんな感覚を 味わうなんて。“いいね!“をクリック しながら、もうへんな気遣いと疲労感でいっぱいになってしまいました」

しかも、実際に写真投稿をしてみると、意外と手間がかかる。インスタ映えする場所や角度を確保し、撮影の画面を決め、さらに画像加工、気が利いたコメントを付け加える・・・。

「想像以上の労力に驚きました。こんなことをしていたら、料理も冷めてしまいそうだなと思いました。最近、オシャレなカフェで女性同士が特別会話もしないで、黙々と自撮りをしている光景をよく目にしませんか。みなスマホの画面とだけ対峙しているから、周囲が見えてないのでわからないと思うのですが、周囲から見えるとあれ !? と思うことが多い。外で待っている人がいるのにいつまでも写真を撮っていたり、食べている隣で写真を撮られて落ち着かなかったり、写り込まないよう顔を背け たり。写真の中の世界は素敵かもしれませんが、その場面で周囲への気遣いがなく、残念だなと思うことが多くなっているような気がしますね」

大事なのは、俯瞰力。 少し自分を引いてみるとリアルな自分が見えてくる

確かに、SNSのマナー低下は最近話題になる。SNS上の人間関係で気疲れやストレスが生まれている人も少なくない。かと言って、自分だけやめるという選択も難しいのが現状だ――。

「確かに、完全にやめるというのは、人間関係として難しいと感じる人は多いかもしれません。ただ、ずっと SNSばかり見ていると、SNS の上で展開される世界に支配されてしまう。それによって、”いいね!”と思わないのに、クリックする気遣いストレスや人間関係を深読みする精神的な負担を負ってしまう。
こういったことを回避するには、SNSをチェックする回数を今よりも見る回数を減らすことが必要だと思いますね。あとは、自分と比較対象にならない人をフォローしてチェックするのもおすすめですよ。

私がよくチェックするのは、サウジアラビアの王子様のSNS。もうとんでもないセレブですから、うらやましいという気持ちすら起きません。
SNSの気遣い やストレスは、微妙な張り合いによる競争心です。同じぐらいの身の丈の人やちょっと頑張れば真似できるのでは、という人ばかり見ていると、もっと頑張らねば、この人に気に入られたいといった自己承認欲求が高まる方向に進みがちになります」

辛酸さんは”俯瞰(ふかん)力”、少し自分を引いてみる力が大事なのではないかと指摘する。

「SNSではないんですが、以前、 表参道のおそうじボランティアに参加したことがあったんですね。表参道はきれいだしゴミなんてないのかと思ったら、見渡してみると意外とゴミが多かった。最近は電子タバコも増えてマナーが良くなっているタバコですが、吸殻も想像以上に多かったですね。いつも前を向いていたので、足元を見ていなかったんですよね。少し視点を変えて、全体を見てみると、普段見えないものが見えてくるんだなって思いました。しかも、 街がきれいになったら気持ちまできれいになった気がしました。これは発見でしたね。
もしかしたら、SNS も同じなのかもしれません。いつもスマホの画角でものを見ていると知った気になってしまうけれど、気付いてないことも多い。人ともコミュニケ ーションも取れているようで、実は取れてないのかもしれません」

画角を狭くしないで、少し引いてみる。そうすると自分の立ち位置や振る舞いも不思議と見えてくるもの。SNS時代の気遣いは難しい。 だからこそ、埋没しないことが必要なのかもしれない。

インタビュー/伊藤まなび 
イラスト/たつみなつこ

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