気配りが”気にしすぎ”になってしまう世の中…ってどう?

忙しく働くアラサー女性にとって 同僚、先輩、女友達、そして大切なパートナーとのコミュニケーションは、相手を知るために、 自分の成長のためにいろいろな意味で重要です。 でも、そこにはさまざまな想いが存在するからこそ 今、どのように付き合っていけばいいのか。 精神科医の名越康文先生に伺ってみました。 

スマートな気遣い、気配りとは、他者の為、という意識だけでなく、自分にとっての心地よさもしっかり味わえることが大事

海外の人に日本人の魅力を尋ねると、“親切” “優しい”というフレーズとともに必ず入ってくるのが、“気配り”に優れているということ。そもそも“気配り“とは、国語辞書では、あれこれ気を遣うこと、手抜かりがないように注意すること、心遣いや配慮ができること、という意味になる。

「でも、この気配りは案外難しい。さじ加減を間違えると、気配りは“周囲を気にしすぎる”というピリピリとした心理状態になってしまう。気配りすることが単にマニュアル化されて表面的なものになると、かえって相手にストレスを与えてしまうこともあるわけです」とあえて一石を投じるのは、精神科医の名越康文先生だ。

「本来、気遣い、気配りというのは、周囲だけでなく自分も含めて、リラックスして気持ちよく時間を共に過ごすためのものでしょう。でも、実際には、気配りというと、自分を抑圧して他人を優先すること。さらには他人から嫌われないため、指摘を受けないために自己防衛として行っている“気配り”も意外に多いのです。もちろん、自分勝手な自己主張ばかりはいけないですが、“あの人はどう思ったかな” “私がしたことを嫌がってないかな”と他者の視点にばかり立ってしまうのも、いつか疲れ果ててしまいます」

心理学では、これは“過剰適応”とも呼ばれ、名越先生によると日本人の2〜3割にはこの傾向があるのではないかという。本来は優しい気持ちから発した気遣いや気配りなのに・・・。

「気遣いや気配りが、“気にしすぎ”に変わってしまうわけです。この気にしすぎな状態は、他者にも緊張として伝わってしまいます。例えば、周囲の評価が気になる人は、批判されるのが怖いので、誰にでもニコニコしてしまう。でも、そのニコニコは本物ではないので、本人はとても無理をしている。その無理をしている感情は、他者にも雰囲気として伝わってしまうのです。自分が疲れるだけでなく、実は相手の心も疲れさせてしまうこともあります。こうなると、本来したかった気配りや気遣いからは離れてしまう。でも、こんなふうに空回りしてしまう人は少なくないのです。特に、女性は周囲の反応を気にする傾向が強いので、そういったことで心が摩耗している人は多いと思います」

一見おっとりして優しい人にも出世欲のある活動的な人にも、このタイプはみられる。どちらにも共通しているのは、心の中で他人を恐れるがあまりに嫌われないように過剰に反応してしまうという点だという。

「人からどう思われても気にしない、という人もいますが、そうスパッと言い切れるものではないと思います。私にも周囲の人にはよく見られたいと思う部分があります。でも周囲の目や評価は一定ではなく、理由がなくても下がることもあります。すべての人からいい人と思われる手段はないのだと思います。
“人の評価など曖昧なものなんだから、気楽になろう”とまずは、気付くことです。さらに、周囲はそんなにあなたのことばかり注目はしていないものです。冷静に想像してみてください。自分が誰かのことを一心に考え続けたりは滅多にしませんよね。よほど好きな人や利害関係がある人でなければそんなことはしません。ちょっと疲れていて自意識過剰になっているな、と笑って流すマインドも必要です」

人の為だけでなく、自分にとっても快適なことが大事

では、スマートな気遣い、気配りとはどうすればいいのだろうか? 名越先生は、他者の為、という意識だけでなく、自分にとっての心地よさもしっかり味わえることが大事だという。

「例えば、わかりやすいケースで言えば、最近マナーが話題になるタバコです。喫煙可能な場所で吸う、歩きタバコはしない、煙を嫌がる方がいたら吸う場所を考えるといった配慮はもちろん必要です。これは気配りというより基本だから必要最低限のことです。でも、せっかく吸うならば自分も楽しむ視点も忘れてはいけないと思っています。そのためには、煙や臭いが軽減される最新式の電子タバコなどを利用するのもいいでしょうね。これは、他者への気遣いにもなり、自分のストレスの軽減になります。本当の意味の気配りや心配りにあたると思いますね。他者だけでなく、これをしたら自分にとっても気持ちがいい、選びたいなと思うこと。自分にとっての心地よさも忘れないことです」

でも、過剰適応状態が長く続いていた人のなかには、なかなか自分の快さに気持ちが向かない場合もある。そういう人は、場を変えて、“自然”と触れ合ってみるといいと名越先生は言う。

「ストレスが解消できないとき、人の目ばかり気になるとき、暗い気持ちが拭えないときは、今いる場所から離れて自然に触れ合ってみるといいでしょう。気分を変えるには、何より場所を変えること。その中でも土の上を歩き、木々の下を散歩することが最も強力な心理療法です。自然には、気持ちのよどみを解消する力があります。ほかには、ヨガや呼吸法もおすすめです。今の社会は、人間関係でも、会社でもSNSでも、不安に彩られた気遣いが横行しています。気づいていなければ知らず知らずにその流れに飲まれてしまいます。より自然な、自分らしい気遣いができるようになりたいものです」

イラスト/mio・matsumoto 
取材・文/伊藤まなび

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