主演女優がアジア系女優史上初の快挙!“嘘”から始まる家族の感動ストーリー

主演オークワフィナが、アジア系女優初のゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞した話題作「フェアウェル」。西洋と東洋の文化が入り混じる、笑いあり、感動ありの心温まる家族の物語です。今回はこの作品について、映画ライターの渥美志保さんに語っていただきました。(編集部)

祖母の死を前に右往左往する家族たちと、驚きのラスト

6歳の時に両親とともにアメリカに移住した中国系移民のビリーは、中国に暮らす祖母が肺がんであることを知ります。当初、「親類の結婚式で中国に行く」と言っていた両親ですが、それは感情がすぐ顔に出てしまうビリーを連れて行きたくなかったから。中国ではガンになった本人に病名も知らせず余命宣告もしないんですね。結婚式をやるのは、親類達が彼女に最期に彼女に会うための口実なんです。

でもそれはビリーも同じことで、彼女は両親を追って中国へ。「偽の結婚式」で集まった親類一同を前に、祖母は何も知らず式を仕切る気満々。アメリカ育ちのビリーは「真実を伝えるべきじゃないか」と葛藤します。

映画は主にアメリカと中国、西洋と東洋のカルチャーギャップをコミカルに描いてゆきます。祖母の息子たちは、ビリーの父がアメリカ、叔父が日本で。さらに祖母の妹の大叔母の娘は中国で、それなりにリッチにやっているようです。

映画にはそうした親族が全員で食事の円卓を囲みながら、自分の文化を美化し、相手に矛盾を突かれる場面があって、これまたちょっと可笑しい。例えば、「中国に戻ればすぐに億万長者になれる」とうそぶく父のいとこは、息子をアメリカに留学させています。

ビリーの母はそんないとこに「アメリカの価値はお金じゃない」と言いつつ、夢を追う金欠のビリーに説教するのが常で、ビリー自身も「家賃が払えないなら出ていけ」と家主に言われたばかりです。彼女はアメリカの個人主義にどこか疲れてもいて、中国的な家族主義への憧憬もあるんですね。

中国人の中にたったひとり紛れ込んだ日本人、いとこの嫁・アイコが、結構細かく丁寧に描かれているのも面白い。円卓で全員で「乾杯」した後、アイコはちょっと口をつけてコップを置こうとする。でも周囲を見ると、みんな本当に「乾杯(杯を乾かす)」で一気に飲み干していて、あら?あれ?とアイコが戸惑います。

結婚写真の撮影でも、取ってつけたようにはベタベタできないアイコに、祖母は「愛情表現ができないわけ?」とおかんむり。そんなわざとらしいの、日本人には無理だって、おばあちゃん!と笑ってしまいました。いやもう、墓参りとか結婚式とか、申し訳ないけど笑っちゃう。別世界です。

そうする間も、アメリカ派のビリーは葛藤し続けます。私が祖母なら真実を知りたい。そうすれば残された短い日々をどう生きるか決められる。でも中国派の父両親世代には「人間はがんで死ぬのではなく、恐怖で死ぬのだ」「中国での死は、個人のものでなく、家族のものだ」とたしなめられます。右往左往する家族たちは、決断するのかしないのか。

カルチャーギャップの家族ドラマをユーモアで描くこの映画、何がってラストの驚きはすごい。なんというか、おばあちゃん、すごすぎる。わたしは「ええええ~~~!」と声を上げてしまいました。人間はひとつの価値観のみですべてがうまくいくほど、単純ではないのかもしれません。

『フェアウェル』
【監督・脚本】ルル・ワン    
【出演】オークワフィナ、ツィ・マー、ダイアナ・リン、チャオ・シュウチェンほか
近日公開予定
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http://farewell-movie.com/

渥美志保
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渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
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