アカデミー賞でフランシス・マクドーマンドが語った“女性の未来”とは?

第90回アカデミー賞が日本時間2018年3月5日に開催され、『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を含む最多4部門を受賞しました。 今年のアカデミー賞は昨年のようなトラブルもなく、笑いから涙まで名シーンの多い授賞式となりました。なかでもベストモーメントといわれるのが、主演女優賞を受賞した『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンドのスピーチ。今回はその話を中心にお届けします。 

第90回アカデミー賞の主演女優賞について

(C)2017 Twentieth Century Fox

第90回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したのは『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンド。

『スリー・ビルボード』は、ベネチア国際映画祭で脚本賞を受賞後、トロント国際映画祭の観客賞を受賞。ゴールデングローブ賞では、最多となる作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞の主要4部門を受賞。

アカデミー賞では主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)と助演男優賞(サム・ロックウェル)を受賞しました。

---引用---
本作はハリウッドが誇る演技派女優フランシス・マクドーマンドが主演するクライム・ドラマ。アメリカ、ミズーリ州の片田舎の町で娘を殺されたミルドレッドは、依然解決しない事件への抗議のために、町はずれに巨大な広告看板を設置した。それを快く思わない警察官や住民とミルドレッドの間の諍いは、日増しにエスカレートしながらも、事態は思わぬ展開を見せていくのだった・・・・・・。(オフィシャルプレスリリースより)

ベストモーメントとなった受賞スピーチ

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すべての女性にエールを送り、拍手喝采となった受賞スピーチ。ざっくりですが訳してみると以下のようになります。

「ちょっと過呼吸になってるから倒れたら支えてください。私には言いたいことがあるのだから。

オリンピックのハーフパイプで1080°を決めたクロエ・キムも今の私が感じているような状態だったのかしら。みなさん観ました?

まずマーティン・マクドノー監督にお礼を言いたいです。これはあなたが成し遂げたようなものです。たくさんのフーリガンやアナーキスト集団のような私たちだったけれど、本当によくまとめてくれました。

(中略)

もしよければ、今この会場にいるすべてのノミネートされた女性たち、私と一緒に立ち上がってください。メリル・ストリープ、あなたが立ち上がればみんなもそうするからお願い。

女優、監督、プロデューサー、ディレクター、脚本家、撮影監督、作曲家、歌手、デザイナー、みんな立ち上がって!

皆さん会場を見渡してください。私たちには伝えるべき物語があり、出資されるべき企画があるのです。今夜のパーティーではそのことについては話さないけど、後日ぜひ私たちを呼んでいただきたいと思います。
 
最後にこの言葉を残させてください。“インクルージョン・ライダー”」

ハーヴェイ・ワインスタインやケヴィン・スペイシーを発端として、次々に明るみに出たハリウッドのセクハラ騒動。

その抗議を発端に、今こそ変わっていこうという風潮のなか行われた今年度のアカデミー賞。フランシス・マクドーマンドの言葉の影には抗議の意味ももちろん含まれていますが、ただ抗議をするのではなく自らに限らず多くの女性によりスポットを当ててほしいという希望のメッセージが込められた名スピーチになっていたと感じました。

受賞スピーチの模様はABCテレビの公式YouTubeでご覧頂けます。

※日本語字幕はありません。英語字幕は設定で表示させることが可能です。

“インクルージョン・ライダー”とは?

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フランシス・マクドーマンドがスピーチの最後に発した“インクルージョン・ライダー”とは何なのでしょうか。

簡単に説明すると、すべての関係者が契約交渉の際に加えることができる追加の契約のこと。差別的な契約があった際にこれを主張することができるのです。

例えば原作では有色人種であった主人公を、スター性や賞狙いで映画では白人が演じる。そのようなことに抗議の声を上げることができるのです。これは人種だけでなく、性別差別やLGBT、宗教などさまざまな差別において適用されるものです。

もちろん抗議の声を上げて絶対的に変化が訪れるわけではありませんが、再考の機会は設けられ、門前払いにされていた抗議の声がプロジェクトの上層部へきちんと届く効果があります。

このような権利があることをほとんどの関係者は知らないようで、フランシス・マクドーマンドもつい最近知ったと発言をしています。

だからこそ、その事を多くの人に知ってほしい。最後の言葉としてスピーチで発したからこそ、この記事でもこうやって紹介するに至ったわけです。

ちなみに、言葉の発端はTEDにおけるステイシー・スミスのプレゼンです。

---引用---
スクリーンに映る女性や少女たちはどれくらいいますか? 社会科学者ステイシー・スミスは、メディアによって女性がどれほど過小評価されて描かれ、そうした描写が視聴者にどれほど破壊的な影響を与えているのかを考察します。ハリウッドに潜む性差別はデータに裏付けられています。それによれば、スクリーンに映る男性は女性の3倍を占めており、映画製作のスタッフ比率の格差はさらに大きいのです。

下記から動画の視聴も無料で可能です。
https://www.ted.com/talks/stacy_smith_the_data_behind_hollywood_s_sexism?language=ja

さまざま声が上がり揺れに揺れた今年度後半のハリウッド。ただの騒動ではなく、これを起点に変わろうと動き出している。それを大きく感じた今年度のアカデミー賞でした。

文/柳下修平

柳下修平/映画メディア編集長
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柳下修平/映画メディア編集長
映画メディア"シネマズby松竹"編集長、映画ブログ"Cinema A La Carte"運営。映画の楽しさ、面白さを発信することを主眼としてポジティブな言葉で新旧映画の情報を発信。1986年生まれ B型。
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