美文字の秘訣は“勇気”!? バランスの良い漢字を書くための簡単テクニック

大人になってから、もっときれいに字を書けたら・・・と思ったことがある人も多いはず。ここは、日ごろから書道を教えている書画家・夏生嵐彩の連載『文字のクリニック』。 先生のもとに訪れた相談者さんの「字」の悩みを、丁寧な指導で解決へと導きます。読み解くことで、きっと皆さんの字も美しくなっていくはずです。(編集部) 

偏と旁の理想的な関係とは・・・?

こんにちは。院長の夏生嵐彩です。当院ではクセ字や悪筆など、文字の困った病気をお持ちの患者さんに適切な治療と処方箋をお渡ししています。文字のことで悩んだ時はいつでも駆けこんでくださいね。

「先生。頑張って先生の手本をまねしたのに何かが変です」

「ほんと、何かが変ね。何が変だと思う?」

「偏(へん)がチョロンと上からぶら下がって見えます」

「そうですね。あとは?」

「なんか、痩せて見えます」

そうなのです。ほとんどの人が陥るこの2つのトラブル。一体どうすれば回避し解消できるのでしょうか。

高くに跳ぶ勇気!

「にんべん」や「ごんべん」など、わりと長い偏を書いているときにはあまり失敗しないのですが、「口へん」や「山へん」などのように小さくて短い偏を書くと、急に上にちょこんと付いているだけのように書いてしまいます。    

実はこれは皆さんが書いている偏の方に問題があるのではありません。

偏をしっかりと字の真ん中に据えてあげるためには、旁(つくり)をかなり上から書き始める必要があるのです。

短い偏が字の真ん中に居るということは、長い旁の真ん中の当たりにくっついている必要があります。つまり偏の頭よりも相当遠くまで上に手を動かしてから旁を書かなければなりません。これがなかなか怖くてできないんですよね。

もっと!もっと上にあがって!と注意すると「え?こんなに偏から離れるの怖すぎる!」って大体の生徒さんが怯えています。

でも、それだけ離れないと、結局旁の下が長すぎて、小さな偏はチョコンと上にぶら下がってしまうんですよ。

絶対大丈夫ですから、思ったところよりあと一歩だけ高いところから旁を書き始めてみてください。

遠くに離れる勇気! 

さて、もう一つのトラブル。
「痩せ細って見えちゃう現象」 

これも先ほどの仕組みと一緒です。これは偏が短い・長いに関係なく、偏から遠く離れるのが怖いんですよね。

偏から離れるのが怖いからと言って、偏のすぐ横から旁を書いてしまうとします。「利」や「部」のように旁が細長いときにはそれでもいいかもしれません。

ただ、旁の気持ちも考えてみてください。
そもそも左側(偏がわ)に出さないとバランスがおかしくなってしまう字がたくさんあります。それなのに偏から離れずに旁を書き始めてしまうと、偏が邪魔でぺっちゃんこに書くしかなくなるのです。

こうしてふくよかに書けたはずの字が、見事にやせ細ってしまうのです。

旁のためを思って、ぜひ偏からほんの少しだけ、距離をとってあげてください。ゆったりとした字に生まれ変わってくれることでしょう。

ということで本日の処方箋はこちら。

【本日の処方箋】

・短い偏の字を書くときは、旁の書き始めを高いところからはじめよう!

・旁の中に横長に書く必要のある線が含まれている時は、偏から離れて旁を書き始めよう!

それではお大事に。

文・イラスト/夏生嵐彩

夏生嵐彩/書画家
ナビゲーター
夏生嵐彩/書画家
東京学芸大学 書道科卒業。書道と水墨画の教室『墨サロン』主宰。 全日国際書法会 理事/ 日本芸術書院 評議委員。大正ロマンやアールデコに影響を受け、レトロな美人画を得意とする一方、伝統技術と舞台演出を駆使した水墨画ライブペイントや、アートを取り入れた児童への教育活動を行い、文化と教育のために一石を投じている。
このナビゲーターの記事を見る