わたしは心底感動していた。【E-girls山口乃々華連載 ののペディア/目一杯】

E-girlsメンバーの山口乃々華さんが、瑞々しい感性で綴る連載エッセイ「ののペディア」。今、心に留まっているキーワードを、50音順にひもといていきます。

第34回「め」:目一杯

その日、友人が誕生日を迎えた。
わたしはとても温かい気持ちになった。

彼女はたくさんの祝福の言葉、愛の言葉や日頃の感謝の気持ちをみんなから伝えられた。
うれしそうな顔で笑い、ときたま涙をこぼす場面さえあった。

いつもより何度も温度が上がっているその空間に、わたしは心底感動していた。美しかった。


彼女は、もちろんその日のために日々を過ごしてきたわけではないだろう。

明るいパワーを持ち、周りを笑顔にする才能がある、素敵な女の子だけれど、足が震えるような状況の中で、必死に耐えてきたこともあったと思う。
それは彼女が話してくれた言葉から、はっきりとわかる。
そのときばかりは、生きることさえも必死だったのかもしれない。絶対に迷わないように、迷って心が死なないように、と保っている瞬間もあったのだろう。

それでも結果として、彼女はこうして、美しい空間の中心にいる。
この誕生日の一場面は、彼女の生き様を表しているようだった。


目一杯生きているって、こういうことなのかもしれない。

必死に毎日を積み重ねているうちに、ふと、特別な瞬間が訪れる。
うれしいを通り過ぎて、笑いながら涙が流れてしまうような瞬間。

輝いている彼女の姿を見ていたら、わたしもそうでありたい。と心から思った。


それと同時に、目一杯でいられる時期は、今だけなのかもな。と切ない気持ちにもなる。

もう大人なようでいて、まだ器用に消化しきれない思いを抱えたまま、生きているのが今のわたしたち。手放したくてもなかなか手放せない、やっかいな感情があることは、ほんとうに面倒なのだけれど、それは今しか持てない宝なのかもしれない。
割り切れない気持ちを抱えているからこそ、気心知れた友人のあたたかさを感じることができている気がするし、子供に戻ったように笑いあって、そんな関係に素直に励まされ、助けられることも多いのだ。

この先、どの感情が消えてしまって、どの感情がずっと居てくれるのか、はたまた新しく芽生える感情があるのか、わたしにはまだわからない。

けれど、“悲しい”がその先に“うれしい”になったりするし、“苦しい”がその先に“幸せ”になったりすることはもう知れたので、途中でやめることだけはしないほうが、いい気がしている。

不安定な時間は早く過ぎてほしいけれど、こんなふうに、なんだかんだたのしいので、ずっと続いて欲しいな、とも思う。

【ののペディア/目一杯】
わたしを豊かにするもの。

山口乃々華/E-girls
ナビゲーター
山口乃々華/E-girls
3月8日生まれ、埼玉県出身。2011年にLDH主催の「VOCAL BATTLE AUDITION 3」を経て、2012年発売の「Follow Me」よりE-girlsとしてデビュー。2014年から女優業もスタートし、映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画「HiGH & LOW」シリーズやHulu版「崖っぷちホテル!」今年の夏には「私がモテてどうすんだ」にヒロイン役で出演する等、活動の幅を広げている。 2020年9月19日〜26日にアベマLDH祭り〜秋のLIVEスペシャル〜「LIVE×ONLINE IMAGINATION 」の開催が決定! E-girlsは9月25日(金)に出演予定。ぜひご覧下さい!
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