20代女子の冒険と成長に心打たれる!障害の壁を乗り越えて見つけた自分らしさ

身体に障害を抱え、車椅子生活を送る主人公。これまでの自分の世界から脱却するべく、自ら夢と直感を信じて未来を切り開いていく様を描く映画『37セカンズ』。
ひっそりと暮らしてきた主人公がさまざまな人との出会いを通して、見つけた新たな世界とは? この作品について映画ライター、渥美志保さんに語っていただきます。(編集部)

誰だって「欲しい」と望めば、新しい世界を手に入れられる

23歳のユマは、脳性麻痺を抱える女の子。生まれた時にたった37秒だけ呼吸ができなかったことで四肢に障害が残り、車椅子で生活しています。
母親は女手ひとつで彼女を育ててきたのですが、そうした障がいゆえにどうしても過保護になりがちです。もちろん日常生活の中にはユマ一人ではどうにもならないこともあり、母親の手助けは不可欠。

とはいえ、まるで中学生の娘に対するような干渉——例えば「世の中には変な人も多いから」と可愛い服を着ることを許してくれない——を、ユマは窮屈に感じています。

ユマにはマンガを描く才能があり、学校時代からの友人である漫画家のゴーストライターをしています。彼女はユマのことを上手く利用し人気作家になっていて、ユマ自身もその事に気づいています。なんとか自分ひとりで作家としてやっていく方法はないか・・・とデビューのきっかけを探すユマが目をつけたのが、アダルトマンガ誌。でも意を決して編集部を尋ねた彼女を、編集者は「セックスを経験してから、もう一度来てください」とあしらいます。それでもユマはひるまず、セックスをするために夜の街へ出ていく・・・のですが、そこでの出会いをきっかけに、お話はまったく異なる方向に転がってゆきます。

「障害者」「セックス」「アダルトマンガ」と思わぬ単語が並びますが、か細く小さい声が印象的なユマ役の佳山明(めい)ちゃんの——「そりゃお母さんも心配だよね」と思うような——存在感が映画全体をピュアな印象にしています。

いつも頭の中で「どんなマンガを描こうかな~」と考えている彼女独特の視点が切り取る映像は、例えば、ビルで明かりが灯るいくつかの窓が、人の顔に見えるというような感じに、なんとなくファンタジック。
彼女が頭の中で描いた映像がアニメーションとして動き出す場面もあり、これもまた映画に独特の躍動感と疾走感を作っているのですが、そうやっているうちに、ユマ自身がどんどんと外の世界へと走り始めます。「セックス」は「ほしいと望めば手に入る新たな世界」の、単なる象徴でしかありません。

もちろん悲しく痛々しいリアルな展開もある(だからこそ夢物語にならない)のですが、ユマの背中をちょっと押してくれる人々、特に2人の年上女性がめちゃめちゃかっこよく、改めて知ることになる母親の愛情や、自身の出生の秘密なども胸に残ります。20代の女の子の冒険と成長に、ラストには誰もが拍手を贈りたくなるに違いありません。

『37セカンズ』
【監督】HIKARI
【出演】佳山明、神野三鈴、大東駿介ほか
 新宿ピカデリーほか全国公開中
©37Seconds filmpartners
http://37seconds.jp/

渥美志保
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渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
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