表面的な共感で取り繕う優しさほど、実は人を傷つけてしまうのかも

最近、ネットでもよく見かけるようになった“多様性”というキーワード。生きにくさを抱える人を認めようというこの動き。でも、それにちょっと居心地の悪さを感じているミッツ・マングローブさん。表面的な共感は、実は人を傷つけてしまうこともあるという。この記事では、かなり深い気遣いとコミュニケーションについて語っていただきました。

今どきの「気遣い」事情

意見が違ったら攻撃!これってなぜ生まれた?

ここ数年、有名人のスキャンダルや事件が起きると、ネットで一斉に書き込みが動き出す。昨日まで、人気者だった人が、徹底的にグウの音も出ないほど叩かれてしまうこともある。そうかと思うと、叩かれた人を徹底的に擁護する人が現れて、バトルが展開される・・・。こんなやり取りに違和感を持ち、少し距離を置いているのは、女装家であり、知性派タレントとして数多くのバラエティー番組に出演しているミッツ・マングローブさんだ。

「ネットが情報配信の中心になってから、簡単に同じ意見の人と〝いいね!〞やリツイートでやり取りができるせいか、自分の正義と異なるものに対して、徹底的に攻撃する図式が出来上がってしまった感じがありますね。しかも、同じ意見で連帯感も得られるから過剰に走ってしまう。個々が意見を言えるような世の中になったと感じている人もいるかもしれないけど、少し引いて見ると、実は前よりも意見が狭くなっていたり、偏っていたり、他者に同調して意見を言っている人も少なくない感じがします。それってちょっと怖いなって。優しくない世の中になっていると感じることがありますね」

バラエティー番組でコメンテーターとして出演することもあるミッツさんだが、そんなときも、人の言葉に同調したり、流されたりしないようにしているという。

「こんなこと言うと、ものすごく自分の意見がある熱い人と思われてしまうかもしれないけど、本来は、のんびり屋で自分の正義を語ったり、人のことを斬ったりするのは苦手です。小さい頃から口下手だったので、その場で自分の意見を言うのも好きではありませんでした。だから、求められない日常ではそういう思考はありません。でも、お仕事でコメントをする場合は、流されたり、嘘はいけないと思うんですね。人のせいにしない、流されないように、自分の言葉に責任を持つことは、人として大切なこと、最低限のルールだと思っています」

表面的な”わかる~!”は必要なし!簡単な共感が人を傷つけることも

ここ数年、性的マイノリティ、LGBTやそこにQ を加えたLGBTQといった呼び方も広がり始めている。ミッツさんは女装家で性的マイノリティであるが、そういったカテゴライズや最近の流れにちょっと居心地の悪さを感じているという。

「多様性を認めるという世の中は大事なことなんだと思います。ただ、そうなると、〝ミッツさんみたいな人の気持ちわかります!〞と言ってくる人もいます。いっしょに活動しましょう、と言われることもあります。もちろん、活動される方を否定しているわけではありません。ただ、私は、幼い頃から〝共感力〞が低いタイプなんですね。みんなが普通に楽しいって思えることに魅力を感じられないことも多かった。夏は海だよね、と言われてもピンと来なかったり。普通ができないことがとても苦痛でした。大人になるとそれは、普通でない=個性なんじゃない、と褒めてくださる方もいたけれど、本人にとっては、個性なんて素敵なものではなく、共感性が持てないことがダメな人間なんじゃないかって、苦痛に思えてしまったりして、悩んだこともありましたね。多様性と簡単に言えないほど、人はもっと複雑なんじゃないかと思うんですね」

ミッツさんは、〝面倒臭い性格でごめんなさいね〞と笑ったが、これって人とのコミュニケーションで忘れがちなことなのかもしれない。その人の心の奥底まで知らないのに、〝わかる〜!〞と共感してしまったり、こちらの価値観で〝普通〞や〝個性的〞と何気なく口に出していることはありそうだ。

「簡単に〝わかる〜〞と共感してしまうのは簡単だけれど、それって、実は無責任な反応。私が偏屈なのかもしれませんが、わかる〜と言われると、何がわかるのかな?と思ってしまう。表面的なお付き合いならそれでいいのかもしれませんが、人付き合いでは、そんな曖昧な共感の言葉は必要ないんだと思います。それよりもいろんな人がいて、いろんな生き様や考え方があることを知っておくだけで十分なんだと思います。

でも、だからといって、いろんな人がいるからなんでもありな世の中では、秩序が保たれないですよね。そのために法律があって、人と接するときにはお作法や礼儀があるんだと思うんです。タバコにしても、最近は喫煙が厳しい状態になっています。もちろん吸ってはいけない場所で吸うのは、ルールとしてありえませんが、指定された場所で楽しむのは愛煙家の自由です。それなのに、喫煙所で吸っていても非難されてしまうのは、タバコが嫌いな人の共感性の押し売りになってしまうと思いますね。私は愛煙家なので、吸える場所で堂々と楽しんでいます」

自分が好きなように生きるなら、決まったルールは守る、ということは必須だとミッツさんは言う。

「私なんて、生きているだけじゃ社会の何の役にたつかもわからない女装家でしょ(笑)。だから、納税だけはきちんとしています。社会参加をきちんとすることは個性を磨くよりも大切なことだと思いますね」

インタビュー/伊藤まなび  
イラスト/兎村彩野 

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