空飛ぶ気分を味わえる♪コロナで引きこもりがちな日々に気分転換を!

離婚して南仏に暮らす父親のもとで、夏休みの5週間を過ごすことになった14歳のトマ。鳥類愛好家である父の家は、ネット接続すら危ういド田舎で、今どきの少年はスネまくるのだが、やがて父親の元で孵化した30羽の雁を育て始め、親鳥の代わりに軽量飛行機で「渡り」を教えることになったが、さまざまな困難が待ち受けていた・・・。

都会っ子が自然に目覚めるハートウォーミング映画であると同時に、観終わった後に、人間と自然の共存のあり方を考えさせられる、という深い内容のこの作品について、今回は映画ライター渥美志保さんに見どころをたっぷりと語っていただきました!(編集部)

ヨーロッパの大自然を眼下に、空を飛ぶ爽快感を味わう!

14歳のトマは、暇さえあればスマホをいじっている今どきの都会っ子。夏休みも家にこもりっきりの彼を見たキャリアウーマンの母は、仕事の多忙を理由に、離婚して南仏の片田舎カマルグに住む父親のもとに、彼を預けることに。

「水鳥の楽園」である湿原に家を持つトマの父親は鳥類愛好家で、渡り鳥の保護に取り組んでいます。今、熱を上げているのは絶滅危惧種のカリガネガンを卵から孵化させて、「渡り」を教えること。

簡単に書いてしまいましたが、「渡り」(夏に北で子育てし、冬は南で過ごす)は、本来は親鳥が「この季節に、このルート飛ぶんだよ~」と一緒に飛んで教えるもの。でも人工孵化した鳥には親がいませんから、父親は超軽量飛行機で鳥たちと一緒に飛んで教えるという、結構無謀な計画を立てています。

当初は電波が届かない田舎での生活に文句をぶータレていたトマですが、父親が孵化させた30羽の鳥がトマを母親だと思い込んで懐き始めると、田舎暮らしにハマってこの計画に参加。ところが自由人ゆえに、いろいろテキトーな父親のせいでトラブルが続発。このままじゃ計画が頓挫する・・・というところで「僕がやらねば!」と立ち上がったトマは、自ら超軽量飛行機に乗り込み、鳥とともに大空に飛び立ってしまうのです・・・!

この映画の最大の魅力は、映画の半分以上を占める空を飛ぶ場面です。

いちばんの驚きは、飛行中の渡り鳥に、カメラが極限まで近づいていること。飛んでいる鳥をめちゃ近距離で真横から見る「トマ目線」とか、これ絶対CGでしょ!?と思う姿も、この映画ではすべて本物です。トマは飛んでる鳥をなでたり、途中で疲れた鳥を懐に入れてあげたりさえします。

さらにそれ以上に魅力的なのは、その眼下に広がるヨーロッパの美しい風景です。超軽量飛行機は紙飛行機のような三角の羽がついた、骨組みだけのカートみたいな感じで、「え、こんなので飛べるの?」って思うのですが、この飛行場面は悪天候の場面をのぞいてすべてが本物なんだそうです。30羽の鳥たちを従えながら飛ぶ様はほんとうにゆったりと開放的で、大画面で見るとまるで自分が空を飛んでいるような気持ちに。コロナで引きこもりがちな日々に、一服の清々しさを味わえると思います。

映画のベースには、同じことををやってのけた鳥類愛好家の存在があります。映画には常に人間と動物と大自然が一緒に写っていて、その美しい映像を見ると——自然破壊を遠因に持つという説もあるコロナウイルス流行の今、自然との共存のあり方も考えさせられます。

お父さんが住むカマルグは、高級な岩塩で有名なところ。そういう美味しいものも、やっぱり豊かな自然あってこそですね。


『グランド・ジャーニー』
【監督】ニコラ・ヴァニエ
【脚本】マチュー・プティ、クリスチャン・ムレク
【出演】ジャン=ポール・ルーヴ、メラニー・ドゥーテ、ルイ・バスケスほか
新宿バルト9ほか全国ロードショー公開中
©2019 SND, tous droits réservés
grand-journey.com

渥美志保
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渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
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