国内外の映画祭で50冠以上受賞!前を向いて立ち向かう勇気がわく注目の韓国映画

思春期特有の揺れ動く思い、 家族や友人との関わりを繊細に描いた韓国映画『はちどり』。新任の塾講師との出会いをきっかけに、人の心の移ろいを知り、力強く成長してゆく少女の姿に誰もが自分自身を重ね合わせ共感できるはずです。今回はこの作品について映画ライター渥美志保さんに解説いただきます。(編集部)

韓国女子からのメッセージ「傷つけられたら、立ち向かって」

ウニは中学校に通う14歳。トック屋(日本で言うと町の和菓子屋のような「餅屋」)を営む父は、昔ながらの家族の中の絶対権力者で、母親はそんな父に口答えせず、しょうがないものとして努めて反応しないようにしています。父親はすごく教育熱心でもあり、大学受験を強制されている姉は、よなよな家を抜けだし夜遊びで猛烈に反抗中。一方、高校受験目前の兄はソウル大(韓国の東大)を目指すよう言いつけられ、父は家族にも我慢を強いています。

でも中学2年の女子で、勉強もあまりできないウニについては、どこかほったらかし。兄が時折ウニを殴ることも、軽くたしなめる程度です。そんななか、出会った新任の塾講師ヨンジは、ウニに問いかけます。「どれだけの人の心のなかのことを、ウニは知っているの?」

映画はウニの日常をスケッチのように描いてゆきます。ポケベル(懐かし!)で甘い言葉をやり取りするはじめての恋、先生のファッションのダサさを授業中にこそこそ笑い合う親友、1輪のバラの花を手に「先輩が好きです」と告白してくる後輩の女の子。まさに「中学時代あるある」というエピソードが山盛りです。

この年代の寂しさってこういう些細な出来事が紛らわせてくれるものなんだよな、と思うのですが、その一方で互いの幼さゆえの裏切りも。女性観客の誰もが「ウニは私だ」と思える瞬間があります。そしてそういう体験をするたびに、ウニはヨンジの問いかけの意味を知ってゆきます。もちろん「ウニをほったらかし」にしていたかに見える家族にも、表面に見えているものとは別の思いがあるわけです。

映画の舞台は1994年、韓国社会が急激な経済発展をしていった時代です。誰もが変化を強いられる時代の中、懸命に、負けまいと生きるウニの姿が力強いラストです。そんな彼女を力づけるのは、ヨンジが最後にウニに残した「約束して。殴られたら立ち向かうのよ」という言葉です。人生はあるとき、唐突に終わってしまうこともある。それがリアルに感じられる今の時代だから、後悔しないよう、自分が主体となって生きることを励ますその言葉は、一層心に残ります。    

 『はちどり』
【監督・脚本】キム・ボラ
【出演】パク・ジフ、キム・セビョク、イ・スンヨン、チョン・インギほか
ユーロスペースほか公開中
©2018 EPIPHANY FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.

https://animoproduce.co.jp/hachidori/

渥美志保
ナビゲーター
渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
このナビゲーターの記事を見る