時代を超えて想いを伝える。メールやSNSにはない、手紙にしかできないこと

姉が死んだことを告げるために30年ぶりに再会し、スマホの故障をきっかけに文通を始めた幼馴染のチィファと、姉に片想いをし、そして彼女自身の初恋の相手であるイン・チャン。それはやがてチィファの姉・チィナン——中学時代、その美しさと頭の良さで誰もが憧れる存在だった彼女の、その後の人生と死の理由を徐々に明らかにしてゆく。

実は、幼い頃、イン・チャンに恋していたチィファは、彼から預かった姉宛てのラブレターを姉に渡すことができなかったという過去が。チィナンの周辺の人々、その関係を媒介するのが手紙。SNSなどデジタル一辺倒になりつつある現代社会において、手紙だけが持つ意味とは?

今回、映画ライター渥美志保さんに見どころをたっぷりと語っていただきました!(編集部)

美しい光とノスタルジーに満ちた岩井俊二の世界

「姉・チイナンが1週間前に死んだこと」を告げるために参加した姉のクラス会で、姉が死んだことを言いそびれてしまったチイファ。そこで30年ぶりに再会したのは、かつて姉に片思いしていた——そしてチイファ自身の初恋の相手でもある幼馴染イン・チャンです。

連絡先を交換した二人は、当初はスマホでやり取りするのですが、あるきっかけから手紙のやり取りに。それはやがて姉・チィナン——中学時代、その美しさと頭の良さで誰もが憧れる存在だった彼女の、その後の人生と死の理由を明らかにしてゆきます。

監督の岩井俊二には、25年前に世界的に大ヒットした『Love Letter』という作品があります。

手紙はメールと違って「モノ」なので、時代も超えて残るし、間違った場所に送って別の人に届いてしまう、もしくは届かずに終わる、みたなことも起こりますよね。そうやって、同じ人の2つの時代や、同じ時代にいる2人がつながる様を描いた『Love Letter』の手法を、この映画も使っています。

映画が描くのは、一人の死んだ女性にまつわる人々の、過去と現在を巡る群像劇。「手紙」とそれに類するデジタル以前の「モノ」の媒体(メモ、小説、写真など)を使って、それぞれの関係が浮き彫りになってゆきます。例えば、幼い頃、イン・チャンに恋していた妹・チィファは、彼から預かった姉宛てのラブレターを姉に渡すことができません。その後にイン・チャンが姉に書き続けた手紙は、姉の娘ムームーに引き継がれ、やがて小説に。死んだ姉が子どもたちに残す遺書や、息子が死んだ母に書く手紙も登場します。

デジタルと手紙のもうひとつの違いは、それ自体が古びてゆくこと。それぞれの登場人物は、その時にどうすることもできない思いを手紙に書き綴るわけですが、その手紙が時を経て再び目に触れた時に、それ自体が古びていることで、そこに書かれた思いがすでに「過去」であることをそっと気づかせてくれます。  

映画はこの春に日本で公開された『ラストレター』の中国版なのですが、実際はこの作品のほうが先に作られているようです。岩井監督が好むノスタルジーは、この作品のほうがずっと自然に印象深く描かれている感じ。

作品の裏にある現実は結構厳しいものですが、観終わったあとには画面にあふれる優しく柔らかい光の美しさが、心に残ります。

『チィファの手紙』

【原作・脚本・監督】岩井俊二
【出演】ジョウ・シュン、チン・ハオ、ドゥー・ジアン
新宿バルト9ほか全国ロードショー
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https://last-letter-c.com/

文/渥美志保

渥美志保
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渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
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