どこに生きていても。【E-girls山口乃々華連載 ののペディア/住み処】

E-girlsメンバーの山口乃々華さんが、瑞々しい感性で綴る連載エッセイ「ののペディア」。今、心に留まっているキーワードを、50音順にひもといていきます。

第13回「す」:住み処

海の中をぐんぐんと、泳いでいく。

あおい世界に、淡いきいろや、しろい光がちらちらと差しこんでいる。
きっと太陽の光だ、今日は晴れかぁ、とわたしは思う。
光たちは、ゆらゆら揺れて柔らかくて、まあるい世界がそこにはあった。

音は聞こえない。冷たくも温かくもない。においもしない。ふつうに息もできた。

ふと、
わたしはなぜここにいるのか、ここはどこなのか、なにもわからないことに気がついた。

でも、そのときは
わからないことより、海の中にいることがあまりに心地よかったので
まぁいいや、と考えることなんてすぐに放り投げた。

突然水がぐわんと歪んだ。
目に見えていた景色、どこもかしこも歪んでしまって、頭が変になりそうだ。

水の流れが強くなったのか、身体が押されどこかに運ばれている。
ぐわん、ぐわん、と
まるで、のび太くんがタイムマシンに乗って、過去やら未来やらに行くときのまわりのあの景色に、飲み込まれていく感覚。

ハッと、目を開けた。
あたりを見渡してみたけれど、とくになにもなく、シンとした静けさがこわいところだった。
なんとなく、さっきよりも濃く、深い場所に来たことは感じられる。

ふにょっと何かがわたしに触れた。
イルカが、わたしのすぐ横をゆったりと泳いでいた。

こんなに近くでイルカを見られて、しかも、触れるなんて!とワクワクした。
あとを追ってみることにした。
すぐに追いつくことができたので、もう一度、触ってみようと頭をこすらせてみた。

あったかくて、ホッとした。

ほんとうの温度なのか、あったかい気持ちになっただけなのかは覚えていないけれど、
イルカを触ったときのイメージっていうのは、ツルツルでキュッキュッとしていて、冷たいものだと思い込んでいたから、
あったかいんだ・・・と、とても驚いた。

そのままスイスイと泳ぎ続けた。

頭が冴えてきて、目が覚めた。
いつもの天井が見えた。

・・・

これはわたしがいつか見た夢の話。

夢なのに、実際にそんなことがわたしの身に起きたような、変な気分になってしまう。
それはとても不思議な感覚で、ひとつの記憶としてきっちり残っている。

平和で、自由で、穏やかな夢は、
安心してのびのびと泳ぎ回ることができる、心の住み処のようなもの。

いつでも行けるわけではないけれど、肩の力がふっと抜ける、ガチガチに固まったわたしを救ってくれる世界。
元々のわたしが戻ってくるような、そんな大切な場所だ。

朝のアラーム音でハッと我に返り、現実の世界での生活を始める。

“つまらない”と感じてしまうときもある。
“どうしても向き合わなきゃいけないこと”だってあるのがこの世界。

けれど、部屋の外にでれば、海の中よりも、太陽が照らす空間はずっと広い。
力強く、確かな、わたしの居場所を感じた。

ここにもしっかりある。

否が応でも前向きな気持ちにさせてくれる、大きな大きな力。
昨日起きたこと、それから今日することを考えるとき、そっとあたたかなエールを送ってくれている。

どこに生きていても、どこに住んでいても、その場所が発するメッセージをわたしがキャッチさえできれば、
いつだって世界は味方になってくれる。

あまり、深く考えすぎないこと。でもしっかり向き合うこと。
住み処は、あらゆる場所に存在している。

【ののペディア/住み処】
わたしを元どおりにしてくれるところ。
前に進む力をくれる場所。

山口乃々華 / E-girls
ナビゲーター
山口乃々華 / E-girls
3月8日生まれ、埼玉県出身。2011年にLDH主催の「VOCAL BATTLE AUDITION 3」を経て、2012年発売の「Follow Me」よりE-girlsとしてデビュー。2014年から女優業もスタートし、映画「イタズラなKiss THE MOVIE」シリーズ、ドラマ・映画「HiGH & LOW」シリーズやHulu版「崖っぷちホテル!」にも出演する等、活動の幅を広げている。この夏は7月10日(金)全国ロードショー映画「私がモテてどうすんだ」にヒロイン役にて出演! BL大好き妄想ヲタク女子なのに・・・4人のスーパーイケメンDK(男子高生)にモテまくる!? 笑って!歌って!踊って!抱腹絶倒のミラクル☆ラブコメディ!
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