官能美に目を奪われる!ダンサーの秘めた恋心と葛藤、成長の行く末とは——?

東欧のジョージアを舞台に、伝統的な社会のなかで自身に目覚めた主人公が、人生を選び取ってゆくまでを描いた映画『ダンサー そして私たちは踊った』。ライバル心からやがて恋心に変化していく繊細な心情の変化、魂を込めた官能的で躍動感に満ちたダンスシーンは目を奪う美しさです。今回はこの作品を、映画ライターの渥美志保さんにレビューしていただきました。(編集部)

人生とは、愛するものを真っ直ぐに愛すこと

国立舞踏団のダンサーであるメラブは、正式団員になるために修行を積んでいる青年。幼い頃からペアを組んでいるマリとは恋人同士で、最近はその関係がより親密になりそうな気配もあります。

そんなある日、ちょっと変わった雰囲気の青年イラクリが、舞踏団に入団してきます。実力はあるけれど「男らしさが足りない」と言われがちなメラブは、力強く男性的で人惹きつける魅力をもつイラクリに、ライバル心を燃やし始めます。

折も折、正式団員に欠員が出てオーディションが開かれることになり、メラブは朝練を始めるのですが、そこにイラクリもやって来る。メラブはバリバリに警戒するのですが、イラクリはそんなことは意に介さないおおらかさで、二人は次第に友達に。やがてイラクリと一緒に踊るのが楽しくなってきたメラブは、気づけば彼に恋心を抱くようになっていきます。

映画は昨年大ヒットした『君の名前で僕を呼んで』のダンサー版とも言える作品で、見どころはなんといっても主人公メラブを演じるレバン・ゲルバヒアニの魅力。ちょっとファニーフェイスなのですが、笑顔が本当にかわいく、赤いくるくる巻き毛の子犬みたい。ダンサーとして動き始めれば、身体の美しさも抜群です。二人のダンスする姿、じゃれあう姿をみてるだけで、『君の名前~』同様の幸せな気持ちになります。

でも、映画の舞台であるジョージアでは、二人の関係はまだまだ周囲の理解を得ることができません。正式団員に欠員が出た理由も、団員の一人がゲイだと知った他の団員が、彼を袋叩きにしたためだったりするし、さらにメラブの恋人マリは、彼がイラクリを見る目を見て、すべてを察してしまいます。いやほんと、隠しててもわかっちゃうのよねー、女には。そんなわけで、メラブはどんどん窮地に追い込まれて行きます。

映画は同時に、メラブを中心とするダンサーたちの青春モノでもあって、ストイックにダンスに打ち込むひたむきさとか、夜通し盛り上がった後の朝帰りの嬉しいような寂しいような感じとか、初めてみんなで行った旅行の夜中の散歩とか、学生時代に誰もが経験したキラキラした青春の瞬間がいっぱいです。

そんななかで、メラブの恋と、ダンスで食べていくという夢が、どうなっていくのか。物語ではその両者が次第にひとつになってゆきます。つまり、恋愛においてもダンスにおいても「自分らしさ」を封じられた社会において、メラブは何を選び、どうやって生きて行くのか。思い悩み、困難に見舞われまくり、傷つきまくりのメラブが、それでもひたむきに真っ直ぐにダンスに打ち込む——その姿のなんと切なく、なんと可愛いこと。ラストには、思わぬ人が彼の人生に祝福と自由を与えてくれ、その愛情にもウルウル来ると思います。

『ダンサー そして私たちは踊った』
【監督】レヴァン・アキン
【出演】レヴァン・ゲルバヒアニ、バチ・ヴァリシュヴィリ、アナ・ジャヴァヒシュヴィリほか
シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中
©French Quarter Film / Takes Film / Ama Productions / RMV Film / Inland Film 2019 all rights reserved.

http://www.finefilms.co.jp/dance/

渥美志保
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渥美志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。雑誌やWebのほか、企業広報誌などにも多く寄稿。J-WAVE「KEY COFFE METROPOLITAN CAFE」にてシネマスターとして映画を紹介。TOKYO FM「FMシネマ」では構成とキャスティングを担当。現在は映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がけている。
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