淑女が持つべき夏の必需品とは~スタイリスト青木貴子のモノ語り

ファッションのみならず、食やインテリアまで、自身のこだわりに叶ったモノに囲まれた心地よい暮らしを楽しむ、スタイリスト青木貴子さんの連載「おしゃれを彩るモノ語り」
選んだひとつひとつのアイテムに、特別な想いがあるそう。 青木さん自身のスタイルを構築している要素 = 身のまわりのモノについて、 お気に入りの理由、そのアイテムの魅力や背景、使い心地や着心地、 どんな時間をそのモノと共有してきたのか・・・など、大切なモノたちにまつわる物語を綴っていただきます。 今回は、夏の暑さを優雅のしのぐための小道具「扇子」にまつわるストーリーです。(編集部) 

実用も美しさを兼ね備えた、おしゃれ小道具

梅雨が明けると一気に夏!さてさて今年の暑さはどんな感じになるのでしょうか。昨年ほどの酷暑でないことを心から祈ります。
どんなに汗だくでも涼しい顔でエレガントに夏を乗り切りたいなぁと思います。そんな気持ちで愛用しているモノのひとつが扇子。今回のモノ語りは夏に大活躍の愛用扇子です。

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先日満員電車のなかで携帯扇風機を首元に当てている女性を発見。しかもハンディタイプの結構大きめタイプ。何か、何だか、むむむ!と思ってしまった。少しでも涼しくなりたいのはわかるのですが、暑いからといってそれは素敵には見えないですよ〜って心の中で叫んじゃいました。携帯扇風機が悪いのでは無いのです。オフィスのデスクの上で使ったりする分には便利だと思うし良いのかもしれませんが、なんとなく扇風機は自分のテリトリー内で使うものという気がします。むむむと思ってしまったのは、淑やかさがないというか、開けっぴろげ感が満載だったからなのかもしれません。やはり公共の場での立ち振る舞いって気にしたいものです・・・。

とはいえどんな場所でも涼を取りたい暑い夏! そんなときに便利なのは古典的ながらやっぱり扇子。しっとりとした佇まいを感じさせ、風情があるようにも見えるから一石二鳥(笑)。この便利な扇子が誕生したのは奈良時代、日本が発祥の地らしいのです(団扇みたいなものはエジプトや中国に古くからあったそうですが、折りたたむ仕様はジャパンメイド)。平安時代は風を起こすためだけのものではなく、筆記用具(メモ書きとか)として、また和歌を書いて送りあったり、扇子に花を載せて贈ったりというコミュニケーションツールとしても広く使われていたようです。古来から変わらぬデザイン、だから優雅な感じに見えるのかなと思います。

優美に見えるところが好きで、夏は扇子を愛用しています。その中でいちばん気に入っているのがこちらの白檀の扇子。風を起こす度にとっても良い香りが漂います。白檀には身体や精神、空間を浄化する作用もあるそう、風を受けるからだけでなく暑さが和らぐ気がするのはその効果なのかもしれません。

白檀の扇子は繊細な透し模様が魅力。いろいろな柄行きがあるので一本一本印象が違います。天然のものなので、木の持っている色合いや質感は千差万別。同じものはひとつもないので、気に入った一本に出合ったら買い!だと思います。大切に扱えばおばあちゃんになっても使えるので、そう考えるとエコ&シックなお買い物だと言えるのではないでしょうか。

そしてもう一本のお気に入り、こちらは布張りの扇子。先の白檀扇子は透かし彫りが素敵なんだけれども、風を起こす力がちょっと弱いのが玉にきず(見た目は断然良いのだけれど)。それに比べて布張り扇子は風を起こす力が格段あるので、真夏の炎天下なんかは実用的に言うとこちらの方が向いています。こちらの扇子のお気に入りの点は、美しく鮮やかな緋色。暑くてバテ気味なときに見るとなぜか元気をもらえる色味なんです(そういえばお気に入りの日傘も同じ色デシタ!)。

顔元に綺麗な色はくると女性は華やいで美しく見えます。服で鮮やか色を着るのが苦手なひとでも扇子なら綺麗な色を抵抗なく取り入れることができると思うので、そんなふうに好きな色の扇子をファッションの一部として使ってみてはいかがでしょうか? 風で涼しくなるし顔元は華やいで見えるし、やっぱり一石二鳥! 扇子いい仕事しますね(笑)。この夏は一本お持ちになってみて下さい、無いより確実に涼を得られます!

最後に豆知識をひとつ。扇子の手元の金具(骨を束ねている部分)を要と言います。ここが壊れると扇子として使えなくなることからこの部分はとっても大事。ここから最も重要な部分を「肝心要(かんじんかなめ)」というようになったんだそう。そんな重要な言葉の語源になるくらい、扇子は生活に密着していたのでしょうね。エコライフの一環としても扇子は素晴らしいお洒落小物、ちょっと注目してみてくださいませ。

文/青木貴子
撮影/植一浩


青木貴子/スタイリスト
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青木貴子/スタイリスト
ファッション誌、広告などで幅広く活躍する人気スタイリスト。著書『センスは「ある」ものではなく「磨く」もの おしゃれ方程式』(PHP研究所)では、役立つおしゃれハウツーを指南。お気に入りレシピと器について綴った料理本『友だちを呼ぶ日のごはん、わたしのごはん』(扶桑社)も人気。
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